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【バレーボール】主将・石川祐希が〝覚醒〟した瞬間 「超全力プレー」で8強入り王手

東スポWEB 2024年8月1日 6時24分

【フランス・パリ31日発】絶対エースが金メダルへ導く。パリ五輪のバレーボール男子1次リーグ第2戦(パリ南アリーナ)、日本はアルゼンチンに3―1の快勝で初白星。通算成績を1勝1敗とした。主将・石川祐希(28=ペルージャ)は本調子ではない中でも11得点を挙げて、8強入りへ王手をかけた。金メダルを獲得した1972年ミュンヘン五輪以来となる悲願達成には、石川の存在が欠かせない。その大黒柱には、プレーヤーとしての原点となる〝覚醒秘話〟があった。

日本は初陣のドイツ戦でミスを立て直すことができず、2―3で痛恨の黒星スタート。8強入りを果たすためには勝利が必須となる中で、絶対的エースが勝負強さを発揮した。1―0で迎えた第2セットは、劣勢から最大7点差を追いつくと、21―21の場面で石川のスパイクで勝ち越し。最後も主将がレフトから押し込んだ。

試合後の石川は「五輪は勝つのが難しいと感じた一戦だった。ドイツ戦よりはブレークチャンスをしっかりものにできていたけど、まだブレークチャンスだったり、アタッカーのミスが少し目立った。僕もそうだし、そこのパフォーマンスを修正していきたい」。今大会の初勝利にも浮かれることなく、主将らしく冷静に次戦を見据えた。

プレーとリーダーシップの両方でチームを支える大黒柱は、愛知・星城高時代に体力面に不安を抱えていた。当時を知る関係者は「ちょっと痛みに関して敏感なところがあった」と振り返る。竹内裕幸監督(現総監督)もスパイクの打数を調整しながら育てるなど、ケガには細心の注意を払っていたという。

そんな石川にとって、大きな転機となった試合がある。2年連続の3冠(全国高校総体、国体、全日本高校選手権)を目指した3年時の国体だ。全国高校総体を制して挑んだ国体は、準決勝で福岡選抜に2セットを先取されて窮地に立たされた。それでも、石川は「俺に全部ボールを集めてくれ!」と仲間に呼びかけ、怒とうの反撃で大逆転。翌日の決勝はストレート勝ちを収めた。さらには全日本高校選手権も頂点に立ち「奇跡の世代」と称された。

一方で、福岡選抜との激闘には壮絶な舞台裏もあった。試合後の石川は全身のけいれんを起こし、抱き抱えられながらコートを去ったのだ。学生時代の石川と対戦経験のある地元・愛知の関係者は「高校時代の国体の時に一度本気を出したら、全身がけいれんしたので、みんなで銭湯に運び込んだって伝説がある。みんなで銭湯に行ってマッサージをしたらしいけど、あれから石川選手は本気を出しても大丈夫と思えるようになったのでは」と明かす。

それまでは体力面の不安から〝超全力プレー〟を封印していた石川は、チームが敗退寸前に追い込まれたことでリミッターを解除。逆転勝利に導いたことで自信が芽生え、その後のパフォーマンスレベルが大幅に向上したのだ。その後に日本を背負うことになるエースが覚醒した瞬間だった。

次戦は2日(日本時間3日)に五輪3大会金メダルの米国と激突する。表彰台の頂点までの道のりは、まだ始まったばかり。パリの地で新たな「伝説」をつくれるか。

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