パ首位を独走するソフトバンクは2日の日本ハム戦(みずほペイペイ)に6―4で逃げ切り、貯金を今季最多の31とした。7月から不振に陥っていた近藤が2打席連続アーチを放つなど、3打点の活躍で打線をけん引。4カード連続で大事な初戦を勝ち切り、8月連勝スタートを切った。
長期離脱が決まっていた守護神・オスナがこの日、米国へ検査渡米。2点リードの9回は、先月からクローザーを務める松本裕樹投手(28)がわずか8球で三者凡退に封じた。小久保監督が「今年で野球人生が終わるわけじゃない」と気遣ったようにオスナは今季絶望も視野に入る。それだけに、いつも通りのポーカーフェースで圧倒した8球は頼もしかった。
2014年ドラフト1位指名の10年目。当時150キロ超の剛腕にして、高校通算57本塁打を誇った類いまれな野球センスが注目の的だった。鷹は人並外れた胆力、痛みへの強さなどプロ向きの性格と精神性を高く評価して単独指名。第96回全国高校野球選手権2回戦のパフォーマンスが今に通じている。
「右ヒジをやってましたね。めっちゃ痛かったですよ。でも、投げられたんで投げた。それだけです」(松本裕)
盛岡大付のエースとして、優勝候補筆頭の東海大相模を3失点に抑え完投勝利。予選以降ノースローで、120キロ台の真っすぐにスカウト陣はザワついた。だが、強力打線を手玉に取る投球術、顔色一つ変えずバックを鼓舞する立ち居振る舞いが鷹を一目ぼれさせた。部外者の非難や美談を超越する野球人の神髄があった。
教えて備わるものと、そうでないものがある。ゆえに、担当の作山スカウトは獲得を猛プッシュした。9回の場数を踏んで、その才能はさらに開花すると見込んでいるはずだ。この日、日本ハムの守護神で元同僚・田中正義は「ホークス(の9回)には、松本がいますね」と何度もうなずきながら球場を後にした。
「エース」と「4番」と「抑え」は特別だ。10年前の夏に示した資質は、松本裕の未来を予知していたのかもしれない。