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【レスリング】悲願金の文田健一郎は〝本物のグレコローマン〟 笹本コーチも驚嘆「僕らの時代では考えられない」

東スポWEB 2024年8月7日 7時12分

パリ五輪レスリング男子グレコローマン60キロ級決勝6日(日本時間7日)で、東京五輪銀メダルの文田健一郎(28=ミキハウス)が、曹利国(中国)に4―1で勝利し、金メダルを獲得。日本グレコ勢での金メダルは、1984年ロサンゼルス大会の宮原厚次以来、40年ぶりの快挙となった。東京五輪で頂点を逃し、悔しさを抱えてきた3年間。悲願を達成し、「呪いの舞台」とまで語った五輪の呪縛からやっと解き放たれた。

5日の準決勝で2022、23年の世界選手権を制したジョラマン・シャルシェンベコフ(キルギス)に反り投げを決め勝利し、迎えた大一番。文田コールが会場に鳴り響く中、自信に満ちた表情でマットに上がった。第1ピリオド、優位に試合を進め、ローリングなどで3ポイントを奪う。第2ピリオドで1ポイントを返され、腹ばいで守備に回る場面もあったが、返されずに守り切った。金メダルが決まると、応援席に向かってアピール。喜びを爆発させた。

東京五輪で銀メダルだった悔しさを晴らした文田は「もう最高です。長かったなって。いろんな節目から数えたら、もうキリがないくらい、いろんなことがあって。今ここにチャンピオンとして立っていられるのは、たくさんの苦悩とか葛藤があって、その分うれしいこととか、いろいろなことがあって、今の自分がいるんだなって実感してます」と語った。

頂点だけを狙った東京五輪。銀メダルを首から下げても悔しい思いばかりが残った。寝ても覚めても気持ちが晴れることはない。今大会前、五輪の意味について問われた文田は「悪い意味ではない」と前置きしつつ「五輪は呪いの舞台。逃れられないというか。銀メダルを取れたからすごいと言われても、自分は納得できなくて。競技から離れても考えてしまう。五輪を背負って戦いたいと思うし、五輪で金メダルを欲しいと思ってしまう。解けない呪いとして残っているんだと思う」と説明。

「パリで金メダルを取ることで晴れると思う。東京の銀があったからと思えるように笑ってマットを下りたい」と語っていた。パリでついに金メダルを首にかけ、呪縛から解放された。

文田の武器は、反り投げを含む豪快な投げ技だ。指導する笹本睦コーチは「本物のグレコローマンです。つかまえて投げる、上半身で投げる大技。どの階級を通しても、健一郎が一番です。見ていて面白いんですよ」と絶賛する。

海外勢は文田に投げられることを警戒し、組んだり、差したりすることを嫌がるようになった。「昔は逆で、海外勢の投げを日本人が警戒してきたんです。健一郎が変えてしまった。僕らの時代では考えられないこと」と、世界の戦い方を変えてしまうほどの影響力を誇っている。

この日は妻・有美さん、長女・遙月ちゃんら最愛の家族が大声援を送った。「娘の前では負けたくない思いがすごい強い。モチベーションの一つ。勝った後、僕を見つけてくれて、手を振ってくれて、遠かったのに、まっすぐこっちを見て手を振ってくれた」と思い切り目尻を下げた。世界一強いパパの笑顔が、パリで輝いた。

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