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【菊地敏幸連載#18】坪井智哉を見たとき「こいつはプロでやれる」と直観的に思った

東スポWEB 2024年8月8日 11時12分

【菊地敏幸 辣腕スカウトの虎眼力(18)】1997年ドラフトでは1位を中谷仁捕手(智弁和歌山)、2位を井川慶投手(水戸商業)という形で、将来性のある高校生を上位で獲得しました。前回の当欄では私が担当した井川について書かせてもらいましたが、もう一人、この年に活躍してくれた社会人出身の外野手が存在しました。

PL学園、青山学院大、東芝を経て97年ドラフト4位で阪神に入団。その後は日本ハム、オリックスでも活躍した坪井智哉外野手です。経歴を見ても野球エリートです。お父さんも中日などでプレーした元プロ野球選手の坪井新三郎内野手とあって、生まれ持ったポテンシャルは高かったのでしょう。

まあ、鼻っ柱の強さはダントツでした。基本的に東芝の選手は今成スカウトの仕事の領域でしたので私は担当とはいえ、そこまで深い関係性を築いていたわけではありませんでした。97年ドラフトの目玉は何といっても慶応大の高橋由伸外野手。その状況であれば、どの球団も高橋を獲得できれば坪井を獲得する必要はないというのは理解できるはずです。そのため、私として球団に強く推薦するつもりもありませんでした。

ずばぬけた強肩であるとか、俊足であるとか、打球の飛距離を持っているというのは素人が見たって誰でも絶対に分かる能力です。じゃあ、プロのスカウトにしか分からないプラスアルファって何なのか。性格だなんだと言っても、それだって定かではないんですよね。そんなの、今だって確実なことは分かりません。でも、私は坪井を見た時に「こいつはプロでやれる」と直感的に思ってしまいました。

坪井はなぜ自分がドラフト4位なんだ、背番号は若くないのか(与えられた番号は32)、契約金などに関しても自分への評価は低いんじゃないのかと、満足していなかったようです。今はユーチューブの番組に出演するなどして、そんなことを本人が語っていたりしています。

あまり本人との接点を私が持ててなかったから逆に良かったのかもしれません。担当スカウトの立場からすれば、この選手はそこまで言っちゃうくらいなんだから大したもんだよ――。そういう目線で見ていました。「活躍しますよこの選手は」って当時の上司には報告しましたもんね。

フタを開けてみれば1年目から打率3割2分7厘。これは1950年以降に始まった2リーグ分立後の新人最高打率(セ・リーグ歴代1位)ということでした。この数字は大したものです。

余談ですが、坪井が阪神に入団してくることを気にしていた選手もいました。それはPL学園時代、坪井の1学年下にあたる今岡誠(現在は真訪、阪神打撃コーチ)です。PLといえば上下関係が厳しい高校として有名ですもんね。「坪井さんが阪神に来るんですか」と今岡が反応していたのを覚えています。

今岡はアトランタ五輪
の代表として活躍した東洋大の中心打者で96年ドラフト逆指名1位です。その翌年の97年に大学、社会人を経てドラフト4位で入団したのが坪井です。あの生意気だった坪井のことですから、高校時代もクセが強かったんでしょうね。

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