パリ五輪のレスリング女子50キロ級で決勝戦に進みながら、体重超過で失格となり出場できなかったビネシュ・ビネシュ(29)に、母国インドのナレンドラ・モディ首相が8日までに、自身のX(旧ツイッター)を通じてメッセージを発した。
「ビネシュ、あなたはチャンピオンの中のチャンピオンだ。インドの誇りであり、個々の、すべてのインド人を鼓舞してくれる」と書き出したモディ首相。計量失格の痛みの共有を示し、「私の身につまされる絶望感を言葉で表現できればいいのですが」と続けた。同時に、ビネシュは回復力に優れた典型的な存在かつ困難に立ち向かう本質があると指摘。「強くなって戻ってきて! 我々みんなが応援します」と締めくくった。
パリ五輪で金メダル候補の須崎優衣を破る大金星をあげ、インドの女子レスラーとして初の五輪決勝進出を果たした。だが当日計量で失格し、メダルの権利を失った。報道によると、わずか100グラムの体重超過。必死の減量にもかかわらずクリアできなかったという。
モディ首相の称賛はこうしたマット上での快挙と減量努力、悲運に対するものとみられる。これまで銅メダル3個のインド選手団にとって、ビネシュが決勝で勝てば待望の金メダルがもたらされるところだった。
世界最多の人口14億のインドはかねて、その規模に対して五輪など国際総合スポーツ大会での実績に乏しいことが指摘されてきた。夏季五輪には1900年パリ大会から参加しているが、通算金メダルは10個にとどまる。一方で36年の夏季五輪招致の意向もあると言われており、21年の東京大会では過去最高のメダル7個(金1、銀2、銅4)を獲得した。
ビネシュの活躍を伝えた「タイムズ・オブ・インディア」紙の電子版では、「インドは東京大会のメダル数をパリで上回れるか」というアンケートが行われ、イエスが57%、ノーが43%と期待は小さくなかった。ビネシュが決勝に出ていれば、選手団への刺激を呼ぶ可能性もあった。
首相の激励を受けたビネシュだが、引退を表明したとインドメディアで報じられた。