新日本プロレス真夏の祭典「G1クライマックス」Aブロック公式戦(8日、横浜)で、偉大なるKOPW保持者のグレート―O―カーンがSANADA(36)から金メダル級の4勝目を挙げた。
「決めろ最強」がキャッチコピーの今大会において、霊長類最強の呼び声が高いオーカーンの優勝は確実と開幕前から一部でささやかれていた。
ところがダブリー一発放銃級の不運が4試合連続で起きてしまい、まさかの開幕4連敗。常人であればここで腐ってしまうところだが、オーカーンは違う。先を見なくていい…! 目の前の一歩が全て…! この小さな一歩を…ただただ…積み重ねていけばいい…! とばかりに3連勝で巻き返し優勝争いに生き残っている。
逆境にめげずコツコツと努力できるだけでなく、時には勝負に非情になれるのがオーカーンという男だ。SANADAがラウンディングボディープレスかわされ着地した際に右ヒザを痛めたそぶりを見せると、容赦なく負傷箇所に集中砲火。場外のフェンスも利用して右ヒザを痛めつけていく。見ての通りだ…見ての通り…折れた足をいじられると彼は痛いが…わしは痛まない…!
その後もオーカーンはシャイニングウィザードを一本背負いで切り返すなど、圧倒的ひらめきで主導権を握り続ける。元IWGP世界ヘビー級王者の意地で反撃に転じたSANADAにシャイニングウィザードを連発されるが、未来のIWGP世界王者はひるまない。SANADAのデッドフォールを防ぐと「防御こそ最大の攻撃ざんすよ…!」とばかりに大空スバル式羊殺しで切り返す。もはや黄金の必勝パターンとして定着した逆河津落としから、全知全能のエリミネーターで圧倒的3カウントを奪ってみせた。
ついに星取りを4勝4敗の五分としたオーカーンは、優勝決定トーナメント進出争いに生き残った。内藤哲也との最終公式戦(12日、長岡)に勝利した上で、EVILか鷹木信悟が敗れればAブロック突破が決定する。
「戦い方にこだわった。その上で、もう十分なほど、結果を残したと思う。もし次、億が一負けたとしても、負け越したとしても、成長した、それだけで余は…満足じゃ。でも、信じてる…自分を。もっとやれる男だと。もっと! 上にいける男だと。次、内藤哲也を支配して、G1を支配して、IWGP世界ヘビーを支配して、プロレス・イコール・グレート―O―カーンと制定してやる」。そう、オーカーンは気がついたんだ…耳を傾けるべきは他人の御託じゃなくて自分…オレ自身の声、信じるべきはオレの力…!
開催中のパリ五輪を見ても分かる通り、世界のトップアスリートは逆境に強い。柔道混合団体決勝、バレー男子準々決勝、卓球男子団体準決勝と、いずれも日本代表は「2―0」と勝利まであと一歩のところまで迫りながら逆転負けを喫し、世界の高い壁に跳ね返されてきた。
この例を今回のG1に当てはめると、開幕4連敗で絶対絶命の状況に追い込まれながら5連勝での優勝決定トーナメント進出が見えてきたオーカーンの精神力は、もはや金メダリストをも凌駕している可能性を秘めている。
全人類に感動を与えているオーカーンにはG1の優勝トロフィーはもちろんのこと、IOCから特例として金メダルが授与されるべきと言っても過言ではない気がする。