パリ五輪のレスリング男子フリー５７キロ級で決勝進出を決めた樋口黎（２８＝ミキハウス）が〝セレブの誘い〟も断る悲壮な覚悟で悲願の金メダル取りに挑む。８日の１回戦は相手選手の棄権による不戦勝で通過すると、この日の準々決勝でプエルトリコ選手にテクニカルスペリオリティー勝ち。準決勝でもアマン・アマン（インド）に１０点差を付け圧勝。銀メダル以上を確定させた。
喜びもつかの間、樋口は「あと一つ、あと一つ」とつぶやきマット下に。中継テレビ局のインタビューゾーンで海外メディアにマイクを向けられてもスルー。次に日本テレビ系のメインキャスターを務める櫻井翔に声をかけられたが、天下のセレブを前にしても「すみません」と足を止めず、控室へと消えた。
ここまで自分を貫いているのは、決勝（９日）の計量に向けて減量に臨むためだ。湯本健一コーチによると「体重２キロ落とします」と話していたという。樋口は２０１６年リオデジャネイロ五輪で銀メダルを獲得した一方、東京五輪は２１年４月のアジア予選での計量失格が響き、出場を逃していた。細心の注意を払い、金メダルだけに集中している。