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【レスリング】「ワンダーガール」藤波朱理に円形脱毛症の過去 苦難を乗り越えた父娘の女王ロード

東スポWEB 2024年8月9日 8時5分

【フランス・パリ8日(日本時間9日)発】パリ五輪レスリング女子53キロ級決勝で、初出場の藤波朱理(20=日体大)がルシア・ジェペス(エクアドル)を10―0のテクニカルスペリオリティーで下し金メダルを獲得した。公式戦連勝記録を137に伸ばし、世界屈指の強さを誇る「ワンダーガール」。父でコーチの俊一さんとの二人三脚で、体に異変をきたすほどの苦難を乗り越え、見事に栄光を手にした。

決勝は世界最強を証明する一戦となった。ガツガツと攻めてくる相手に一歩も引かず、得意のタックルで面白いように得点を重ねていく。第1ピリオドを6―0でリードすると、第2ピリオドも軽快な動きで圧倒。10―0のテクニカルスペリオリティーで下し、頂点に立った。

「も~最高です! レスリング最高! オリンピック最高です!」と絶叫。「この瞬間を思い続けて、願い続けてここまでやってきたので、それを実現できて、うれしい、うれしい、うれしいという気持ちです」と満面の笑みを浮かべた。

破竹の勢いで成長し、夢をかなえた。しかし人知れぬ苦難もあった。最大のピンチは2022年。2連覇がかかった9月の世界選手権を前に、左足甲を負傷した。俊一さんは「本人はケガの具合から出られないと分かっていた。でも連覇もかかるから、私はギリギリまで『出られるんじゃないか?』とプレッシャーをかけてしまった」と当時を振り返る。意見が食い違う父と娘。藤波はある夜、父と1時間ほど話し合う中、泣きながら「そういうお父さんが嫌や!」と反発した。珍しく感情を爆発させた娘の訴えに、俊一さんは「私が焦るばかりに、つらい思いをさせてしまった」と欠場を決断した。

さらに困難は続いた。左ヒザに蜂窩織炎(ほうかしきえん)を発症し、同年10月のU―23世界選手権も欠場することになった。気持ちが沈む父と娘。俊一さんは「病院へ連れていく車の中で、私が『ハア』とため息をついてしまっていたんですね。その後、娘が『お父さん、見て』と髪の毛をたくし上げるんです。円形脱毛症ができてしまっていた。ああ、ここまで追い込んでしまっていたのかと」と当時を明かす。18歳でストレスが体に出てしまうほど、思い詰めていた。

父は向き合い方を改め、娘と腰を据えて治療に臨んだ。「無理をしなくて結果的に良かったんです。後遺症も出ず、万全の状態で復帰できました。勉強させてもらいました」(俊一さん)。その後、激烈な国内予選を勝ち抜いて翌年の世界選手権で金メダル。パリ五輪切符を手にした。

今年3月には左ヒジを手術したが、前向きな言葉だけを口にし克服。藤波は「父とぶつかり合ったり、ケンカをすることもあったが、父がいなかったら、ここにはいなかったので感謝したいです」と父への思いを語った。若きエースの女王ロードは、どこまでも続きそうだ。

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