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【菊地敏幸連載#19】どういう経緯で…高橋由伸に聞いてみたい「巨人逆指名」の真相

東スポWEB 2024年8月9日 11時4分

【菊地敏幸 辣腕スカウトの虎眼力(19)】1997年ドラフトでは2位・井川慶投手、4位・坪井智哉外野手を私が担当させてもらうことになりました。当時の阪神の戦力補強に少しは貢献できたかなとは思っています。ただ、この年のドラフトの目玉は高橋由伸外野手であり、川上憲伸投手でした。ここに最初からご縁がないから諦めてしまうのは仕事とは言えないという、お話をしたいと思います。

私は当時、高橋由伸の担当でした。早い段階で関東の球団に絞っているという情報はありました。阪神にはご縁は薄いなということは最初から理解してはいました。しかし、どう考えても間違いなく球界を代表するスーパースターになる逸材なんです。その獲得レースの土俵にも上がらず、指をくわえて見ているなんてできるわけないじゃないですか。

あくまで裏の話ですが各球団が獲得競争で相当な金額の予算を用意したとの話をうわさレベルで耳にしたこともありました。本人は8月くらいの時点ではもう希望球団が絞れていたとのことでした。阪神には最初から勝ち目はなかったかもしれません。それでも、やれることを全部やらないままで負けるなんて悔しいでしょ。

今でも当時の高橋由伸の話題になると、いろいろなうわさが出てきます。巨人に入団して選手として何度も優勝に貢献し、監督にまでなった人物です。今さらどうこう蒸し返すつもりはありません。それでも、本当はヤクルトで決まっていたはずという話や、実は西武で決まっていたなどと情報が飛び交ったものです。

普通は逆指名の球団を発表する会見は晴れの席です。満面の笑みをたたえた主役がマイクの前に座っているはずなんです。ですが、あの当時の高橋由伸はどうだったでしょう。硬い表情のまま巨人入りを表明していて、なんだか気の毒にさえ感じた人も多かったんじゃないでしょうか。

当時、各球団のスカウト間ではセ・リーグならヤクルト、パ・リーグなら西武と希望球団を絞っていたという情報を耳にする事はありました。本当のところはどうだったのか。どういう経緯で巨人逆指名に至ったのか、高橋本人に聞けるものなら聞いてみたいくらいです。

うわさの真相はわかりません。結果的に高橋は巨人を選び、本当に球界を代表する選手に成長しました。うわさはもとよりNPBに長年、貢献してくれたということが事実ということでいいでしょう。

私は阪神タイガースの高橋由伸担当として球団に特別予算を組んでもらいました。親しい新聞記者にも協力してもらって資料を作り込み、結構なボリュームのレポートを完成させました。どういう選手で、どういう人格で、将来のプロ野球界を背負って立つ人間だから特別予算を組まないといけない。それだけの人材だから…と。自画自賛ですが、その資料は結構な傑作だったと思っています(笑い)。

最終的には某ホテルで慶応大の監督と内密で面会し、正式にお断りを受けました。どうしても関東の球団が希望だということでした。ただ、断られたのは阪神が最初ですか? と質問すると「ベイスターズさんにはもうお断りをさせていただきました」とのこと。ウチはビリではなかったんだと思い、自分を納得させたものです。

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