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【陸上】北口榛花「一撃決着」の金メダル 小学生時代に剛腕生みだした〝別競技〟は全国Vの実績

東スポWEB 2024年8月11日 7時50分

幼少期に培った〝特殊能力〟とは――。パリ五輪の陸上女子やり投げ(10日=日本時間11日、フランス競技場)決勝が行われ、2023年世界選手権覇者の北口榛花(JAL)は65メートル80で金メダルを獲得した。日本女子勢がトラック&フィールド種目で頂点に立ったのは初めて。陸上界の歴史に新たな1ページを刻んだ鉄腕のすごさを、恩師、専門家の視点から迫った。

右腕から放たれた矢は鮮やかな放物線を描き、金メダルへの懸け橋となった。「プレッシャーになったのであれば、狙い通りかな」。最終6投目に抜群の勝負強さを誇る北口だが、この日は1投目からビックスローを披露。ライバルたちを圧倒するシーズンベストの好記録で強さを示した女王は「うれしいだけじゃ足りない。言葉にできない。メダルが重く感じる」と頬を緩めた。

北口は旭川東高(北海道)入学後に当時の陸上部顧問だった松橋昌巳さんの誘いを受け、やり投げの道へ進んだ。幼少期は水泳、体操などに取り組んでいた中で、全国大会優勝経験を持つバドミントンの経験が大きなプラスとなっているという。

小学5~6年時に故郷・北海道旭川市の「東光小バドミントン少年団」で指導した川合修さんは「肩の強さは人一倍だった。スマッシュの威力は男子以上だった」と回想。練習ではスマッシュばかり打っており、やり投げに必要な腕の瞬発力が自然と磨かれた。「試合でひたすらスマッシュを打っても楽に勝利できるくらいの体力を持っていた。体形も運動能力も良かったし、バドミントンのシャトルが当たる瞬間的な感覚が優れていたので、やり投げにも生きているのでは」と指摘した。

そんな北口の動きは科学の視点からも理にかなっている。筑波大でスポーツ選手の動作解析を専門とする川村卓准教授は、フォームについて「肩甲骨がしっかりと動く。そこの柔軟性が高いので、肩自体がぐっと前に出ていくような動きができる」と説明。その上で「肩甲骨の周りの筋肉が連動しないとちゃんと動かないが、北口選手を見ているとよく動いてるなと感じるので、バドミントンの経験は生きていると思う。肩甲骨をうまく動かす習慣が今のパフォーマンスにつながっていると思う」と高評価を下した。

当の北口も「腕を振る動作、やりを離すタイミング、やりに力を加えるタイミングがハイクリアなどに似ている」とバドミントンがもたらしたメリットを自己分析。しなやかな腕の振りから繰り出す投てきで、世界のトップに上り詰めた。

北口の金メダルは日本勢にとって今大会17個目。海外開催の五輪では04年アテネ五輪の16個を上回り、過去最高となった。節目尽くしの試合になったものの「目指している試合で勝つのは簡単ではないのでうれしいけど、それでも満足できない理由があるのはとても幸せ。やっぱり70メートルを夢の中じゃなくて、現実で投げたい」と浮つく様子は一切なし。次なる偉業に向けて、早くも視線は前を向いている。

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