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〝東大式〟井出洋介「麻雀を通じて自分が伝えたいことを発見しよう」25年2月15日引退を宣言【後編】

東スポWEB 2024年8月18日 10時4分

【レジェンド雀士からの金言】まだ麻雀プロ団体がなかった1979年、東大卒業後に自ら職業=麻雀プロを宣言し、その道を歩みはじめた井出洋介(68)。麻雀のギャンブルイメージと闘い続けてきたレジェンドは、数え年で古希を迎える2025年2月15日を機に現役を引退することを宣言しているが、麻雀ブームといわれる今をどう見ているのか。そして未来を担う後輩プロに伝えたいこととは――。

井出が麻雀プロ宣言をしたころは、竹書房の麻雀専門誌「月刊近代麻雀」(漫画誌「近代麻雀」とは異なる活字主体の月刊誌)が主催していたタイトル戦「最高位戦」に出場する選手が、麻雀プロという位置付けだった。

「ただ1980年、最高位戦の対局中に起きたトラブルが週刊誌等で取り上げられ、84年には竹書房が最高位戦の主催運営をやめることになったんです。であれば参加選手の自主運営で継続していこうとスポンサー集めに奔走しました。翌85年からは最高位戦グループの代表となって10年間運営に携わり、94年には当時最高位を4連覇していた飯田正人さん(享年63)に代表をお願いしました」

現在の最高位戦日本プロ麻雀協会の礎をつくったわけで、96年に飯田から最高位戦グループの代表復帰を打診された井出は改革の柱として「賭けない麻雀」を標榜し、代表選挙に臨んだ。

「でもグループの参加選手約40人の3分の1以上から反対の声があがったんです。再選したものの結果を重く受け止め、賛同してくれた選手たちと新たなプロ団体『麻将連合』を立ち上げました。プロである以上、理想を実現する団体を作りたかったんですよね」

麻雀名人戦3連覇後、自身の戦い方も変化したそうだ。

「リスクマネジメントを意識した打ち方に進化していきました。リーチに対しても、リーチ後に思考停止状態となるのはもったいないと考え方が変わり、リーチ基準を精査し、できるかぎりリーチを打たずに戦っていくようになったんです。攻めるときは辛抱強く、守るときは欲に負けない勇気も必要ですけどね」

こうした井出の勝負哲学は日常生活にも生きると、東京工業大学大学院からリスクマネジメントをテーマに講義を依頼されたこともあった。

では、麻雀プロが3000人を超えた今、後輩プロたちにはどんなことを伝えておきたいのだろう。

「Mリーグ入りを目指すこともプロ活動のひとつだと思いますが、まだその枠は小さく、それ以外の活動も考えてほしいものです。麻雀教室をはじめ、プロとしてできる活動はいくらでもあるはずです。何より単に勝つことだけを考えるのではなく、麻雀を通じて自分が伝えたいことを見つけていってほしい。そのためには、どんな質問に対してもきちんと答えられる専門的な知識を持つ麻雀の専門家になってほしいですね」

自分が伝えたいことを実現するため、井出は行政とも連携してきた。

「麻雀がメジャーになるためには文部科学省、厚生労働省、都道府県といったように後ろ盾が必要で、最終的に目指す後援は国です。競馬はギャンブルではあるけれど天皇賞がある。そうなるまでには歴史があったわけで、日本の麻雀はまだまだこれからだと思っています」

数え年で古希を迎える2025年2月15日に競技麻雀の表舞台から引退することを宣言した。

「実は67歳の時、以前だったらまずしないミスが1年間で3回ほどあったんです。自分を許せないミスだったんですが、逆に自分を客観視できるいいきっかけとなりました。納得のいくパフォーマンスができないまま続けるより、引退を宣言したことで気持ちの整理もつきました」

だからといって麻雀をやめるわけではない。

「これからは中国麻雀や私設リーグなど、自分の好きな麻雀に専念できるから、より楽しくなる気がしています。プロとしてのプライドなど、勝負に対するさまざまなしばりが減ることで、気持ちもラクになっているんですよね」

そう笑う井出にとって麻雀とは――。

「私の場合はほとんどのことを麻雀で学んできました。人間性も出る本当に摩訶不思議なゲーム。ツイていないとか、マナーの悪い人とはやりたくないなどと言うのは自分本位のわがままですね。麻雀に対する向き合い方はその人の鏡、自分のことを映してくれるゲームなので、私もだいぶ成長できたかなと今になってやっと感じられるようになりましたね」

☆いで・ようすけ 1956年2月15日、東京都生まれ。日本健康麻将協会初代代表。麻将連合初代代表。全日本健康麻将協議会顧問。主な獲得タイトルは名人位のほかに第19期最高位、第2・4・12回王貞治杯ビッグワンカップ、第28期王座、第15期将王など。麻雀番組「THEわれめDEポン」で初回放送から解説を務め、ファミコンソフト「井出洋介名人の実戦麻雀」ではCMにも登場。「東大式 麻雀に勝つ考え方」「マンガでわかる!東大式麻雀 点数計算入門」など“東大式”と銘打った入門書や戦術書を100冊近く出版。

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