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冬虫夏草はサプリよりも薬膳スープ 希少価値アップで〝国産栽培もの〟も人気【後編】

東スポWEB 2024年8月18日 10時4分

不老長寿の高級生薬とされる冬虫夏草だが、希少で高価だ。では、どんな取り方をするのがいいのか、またどんな選び方をするといいのかを専門家に聞いた。

【漢方薬として滋養強壮に、薬膳スープの素材に】

漢方では肺呼吸器が弱い人や慢性の咳、ぜんそくの治療には、ごく少量の冬虫夏草を煎じて単独で、または川貝母などの生薬と合わせて用いる。また腎臓や足腰の弱い人やインポテンツの治療に単独、または杜仲などの生薬と合わせて用いるという。ただし発熱やかぜなど感染症の期間中、また肺熱喀血の場合は禁忌とされる。

漢方生薬として利用される一方、冬虫夏草を成分とするサプリや滋養食品も多く販売されているが、サプリなどよりも薬膳スープとして取るのを勧めてくれたのが薬膳研究家で国際中医薬膳師・国際中医師のユウ・シャーミンさんだ。

「中国の伝統的な薬膳では冬虫夏草と鴨の薬膳スープは滋養効果の高い高級薬膳のひとつです。ただし伝統的な本来の冬虫夏草は天然野生の食薬素材で高価なので、近年はカイコから人工的に栽培した虫草花というキノコ類食薬素材が薬膳でも重宝するようになっています。効能は冬虫夏草と似ることから薬膳料理を楽しまれる方には虫草花をお薦めしています」

虫草花は乾燥したキノコ状の食材で、調理方法は炒める、煮る、スープにするなど簡単だ。鴨や鶏、アヒルなどとスープにするのがいいという。

【気候変動でさらに希少に、人工栽培されたカイコ冬虫夏草が注目】

冬虫夏草の主な産地は中国の青海省チベット高原、四川省、雲南省、甘粛省、貴州省などである。海抜3000メートル以上の高原地域に天然で生息するものを夏に採収する。伝承的な冬虫夏草といえば、このチベット高山地帯原産のものを指す。

もともと高価な冬虫夏草が近年さらに希少化したのは気候変動の影響だ。降雪量と氷河が減少したことで山岳地帯の気温が上昇し、冬虫夏草が育ちにくくなってしまった。冬虫夏草は、摂氏5度前後の冷たくはあるが凍りついていない土壌でよく繁殖する。しかし、チベット高原地方のこの半世紀の気温上昇幅は世界平均の3倍にも達し、氷河は15%に縮小したとされる。

そこで天然のものは希少性から、より高額で取引されるようになった一方で、人工栽培された冬虫夏草が天然ものよりも安価で販売されるようになっている。天然ものと全く同じものを人工的に生み出すのはなかなか困難だが、キノコである冬虫夏草が寄生する昆虫で、より豊富なタンパク質源であるカイコ、蛾、ハチ、アリなどが用いられたものが冬虫夏草として販売されるようになった。

中国産だけでなく、最近は日本国内で栽培されたものも登場しており、国産であることから人気を集めるようにもなっている。特に注目されるのはカイコから作られるカイコ冬虫夏草で、有効成分であるコルジセピンが多く含まれている。ユウさんの紹介した虫草花もカイコ冬虫夏草の一種と言える。

「冬虫夏草は原形のままのもの、パウダー状に加工されたもの、あるいはサプリメントなどに配合されて販売されています。チベット産の天然物などは私でもたまにしか使えないほど高価なものですが、値段や使う際の利便性から判断して利用していただくのがいいと思います」とユウさんがアドバイスしてくれた。

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