第106回全国高校野球選手権大会の熱戦も佳境に入ったが、今大会も連日の酷暑が容赦なく選手たちに襲いかかっている。足がつる選手、担架で運ばれる選手、集中力を欠いた凡ミスも後を絶たず、選手の健康面が例年以上に心配された。抜本的改革が望まれる中、日本高野連は7イニング制導入の協議に入ったが、現場からは反対意見が多く、足並みはそろいそうもない。何か名案はないのか…。出場校の監督に見解を聞いた。
クーリングタイムや給水、白スパイク解禁などアルプス席を含めてこれまでさまざまな暑さ対策が講じられてきたが、もはや一時的な工夫だけでは〝熱波〟を防ぎきれなくなってきた。今大会は第3日までを3試合制とし、日中の高温の時間帯を避け、第3試合をナイターで行う2部制を実施。終了時間は午後9時半を回った。将来的な本格導入に向けてのテストケースだったが、大幅に暑さを回避できるとはいえず、4試合制で2試合ずつ間をあければ、終了時間はさらに遅くなる。
夏休みの時期は動かせず、球児たちの甲子園へのこだわりは強い。そんな中で日本高野連は7イニング制の導入を議論するワーキンググループを設立した。球数制限と同様に試合時間の短縮で選手の負担を軽減しようというものだが、現場の監督からは反対意見が目立ち、大阪桐蔭・西谷監督は「個人としては9回までやらせてもらいたい気持ちは強く持ってます。子供たちの大事な3年間の1試合を短くする必要はないし、発表の場でもあるので少しでも出場機会を与えたい。戦い方も全然変わる。暑さが大変な状況になっているけど、それを踏まえた上で他にも手だてがあるんじゃないか、イニングを減らすことではないのでは…」と私見を述べた。
南陽工・山崎監督も「絶対9イニング。こちらが9回を6試合戦えるだけの選手を鍛えるべきと思う。暑いからといって音を上げるべきじゃないし、暑かったらそれなりに鍛えなきゃいけない。開始時間をあけて工夫するのは素晴らしい取り組み。選手は割と大丈夫でも高校野球はいろんな方々に支えられている。サポートしてくれる方々やスタンドのお客さん、そういう方々は鍛えていないですから。イニング短縮になると野球自体が変わってくる。進歩しない」と言い切った。
明豊・川崎監督も「9イニングある方が選手を使ってあげられる。7イニングだと(ベンチ入りする人数が)20人もいるのかって話になる。健康第一だけど、暑さに耐えるように準備していくのもスポーツの良さだし、環境にどう対応していくか頭を使うのもスポーツ」と現行を維持できるとみている。
では他に手だてはないのか…。西日本短大付の西村監督は「ベンチ入り人数を25人にしたら負担が減るし、選手の生かし方も変わる」と登録メンバー増を提案。また、ある高校の監督は「歴史があるので場所は変えられないと思うし、時期をずらすのも難しい。となるとドームにするしかないんじゃないですか。おカネをかけても生命が大事じゃないですか。何があるか分かんない。思い切りよくやらないといけないと思います」と甲子園球場をドーム化し、空調設備を整えるしかないとの考えを明かした。
こうなると高野連ではどうしようもない。井本亘事務局長は「2部制も7イニング制も協議、検証していく。遅い時間まで試合をやらせるといろんな声があるし、7イニングは現場の反対意見がある。ただ、誰かが決めないといけない。ドーム化についてはこっちで決められることではなく、阪神さんの話になる」との見通しを示した。
いずれにしてもドラスチックな改革に迫られている。夏開催を継続するならもはや「究極の一択」しかないのかもしれない。