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【甲子園】関東第一ナインが米沢監督に手渡した〝元気球〟 勝利への執念がこもった誕生日プレゼント

東スポWEB 2024年8月22日 6時12分

さあ、あと1勝だ。第106回全国高校野球選手権大会の第13日(21日)準決勝第1試合に登場した関東第一(東東京)が神村学園(鹿児島)を2―1で破り、夏の甲子園で初の決勝進出を決めた。投手陣が強力打線を1点で抑え、無安打に封じられていた打線が7回に奮起。2点を挙げて逆転に成功して逃げ切った。自分たちのペースに持ち込み勝利した関東第一だが、その裏には選手が米沢貴光監督(49)に手渡した、ある名将にまつわる〝元気球〟の存在があった。

持ち味の堅守が随所に光った試合だった。その象徴的なプレーが飛び出したのは1点リードした9回だ。6回から2番手で登板したエース右腕の坂井(3年)が二死一、二塁のピンチで中前打を許した。同点かと思われたが、中堅手の飛田(3年)が本塁へダイレクトでストライク返球。二塁走者を間一髪でタッチアウトにする劇的な幕切れに、スタンドからは大歓声が沸き起こった。

飛田の一世一代の〝神バックホーム〟に米沢監督も「彼が送球で少し悩んでいた時期があったことを思い出した」と目を潤ませ「(試合前に)少しアドバイスというか、こうした方がいいんじゃないかみたいなことも話した。そういうところを通って、ああいうプレーになった」と興奮気味に語った。

3試合連続で1点差の接戦を制し、〝らしい野球〟全開で決勝戦へ駒を進めた関東第一だが、そこには明徳義塾(高知)を率いる名将・馬淵史郎監督(68)へのリベンジがあった。

発端は明徳義塾との3回戦(16日)に3―2で勝利し、引き揚げた宿舎でのこと。選手たちは17日で49歳を迎える指揮官のために、前日に誕生日プレゼントを贈ることを計画。部員たちでお小遣いを出し合い、監督の好物であるソフトキャンディー「ハイチュウ」やキーホルダー、さらにはケーキなども用意した。食事の時間になると部員が部屋を暗くし、主将の高橋(3年)がケーキを持って登場。米沢監督はサプライズに照れながらも笑顔で応じたという。

そんなプレゼントの中にあったのが、その日の明徳義塾戦でのウイニングボールだ。選手たちの粋な計らいとなったが、このボールは指揮官にとって、ただの1球ではない重みがあった。

米沢監督は2000年の監督就任以来、馬淵監督率いる明徳義塾とは08年センバツの1回戦、14年センバツの2回戦と2度対戦したが、いずれも敗戦。同校としては1987年当時のチームがセンバツの1回戦で1度だけ勝利しているが、米沢監督個人としては2戦2敗で苦汁をなめさせられてきた相手だった。

それだけに「3度目の正直」を目指す指揮官は燃えに燃えていた。明徳塾戦前には「2回とも負けている。絶対勝とう!」と訓示し、「馬淵監督は何をしてくるかわからない」「相手は選手だけじゃなくて監督もいるぞ! 選手が100%の力を出せば、俺が采配で120%になるようにサポートするから」とハッパをかけていたほど。

ついに名将相手に悲願の勝利を果たした米沢監督だけに、選手がその明徳義塾戦のウイニングボールをプレゼントしてくれたとなれば、その喜びは格別なものとなったというわけだ。

こうして勢いに乗ったチームは準々決勝で優勝候補の東海大相模(神奈川)、準決勝で神村学園(鹿児島)といった並みいる強豪を撃破し、決勝の舞台に勝ち上がってきた。

まさにチームを波に乗らせた〝元気球〟。残る欲しいボールは京都国際との決勝戦(23日)でのウイニングボールだけだ。関東第一史上初の全国制覇を成し遂げた先に、深紅の大優勝旗と未来を照らす新たな〝元気球〟が待っている。

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