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UUUM創業者・鎌田和樹氏の「名前のない仕事」を成功に導くビジネス論

東スポWEB 2024年8月27日 14時5分

ユーチューバーマネジメント事務所「UUUM」創業者で起業家の鎌田和樹氏(40)が、自身初の単著「名前のない仕事 UUUMで得た全知見」(ダイヤモンド社)を27日に発売した。名前すらない仕事にも全力で取り組み、UUUMを大きく育てたその半生やビジネスの考え方、そしてこれからとは――。

鎌田氏は19歳で大学を中退。株式会社光通信に入社しキャリアをスタートさせた。「光通信の時代がなかったら今の僕はいません」と語るように、多忙な社員たちを支えるべくゼネラリスト、言い換えれば何でも屋として“名前のない仕事”でも全力で取り組み、当時最年少で役員にまで上り詰める。その後退社し、ソフトバンクグループ創業者・孫正義氏の弟で実業家の孫泰蔵氏のひと言で起業を決意。ほどなくして、トップユーチューバー・HIKAKIN(ヒカキン)と出会い2013年、29歳でUUUMを設立し、ユーチューバーのマネジメント業務などを開始する。

「(著書の)帯はヒカキンと泰蔵さんに書いてもらったんです。前に勤めていた光通信を辞めて将来を考えていた時に、泰蔵さんから『起業したら?』って言われたのは大きかった。でも、起業したからといって仕事はない。そこから2年近く、がむしゃらにニートみたいなことをしながらヒカキンと再会して、『いろいろと(多忙で)困ってることがあって…』と相談を受けたから『じゃあ、僕が手伝ってやる』って。今の僕があるのはUUUMがあったからなのは間違いない。そのUUUMっていうものをつくるきっかけとなってくれた2人との出会いは、人生の岐路なのかもしれないです」

その後、孫氏の言葉とヒカキンの助力もあってUUUMが大きく成長すると、鎌田氏は“カリスマ創業者”として徐々に名を上げていく。オフィスも原宿の雑居ビルのワンルームから六本木ヒルズ、さらには東京ミッドタウンに拠点を移すなど、大幅なランクアップとなった。

「実はこの“オフィス事情”には理由があって、移転を決めたのは、最大の取引先のGoogleさんが六本木ヒルズに入っていたっていうのがあったんです(ユーチューブはGoogle社が運営)。やっぱり取引先に近いってことはビジネスにとって有利だと思っていたので、六本木ヒルズに入らせてもらいました」

とはいえ、ビジネスは一寸先が闇。本書では、家賃が一気に10倍以上に膨らんだことで、この先やっていけるのか…と不安に駆られたことを明かしている。それでも自ら意思決定し、あえて退路を断つ選択をした。鎌田氏は、ビジネスにおいてのこういった決断はなるべくスピーディーに行うことが大事だと考える。

「悩んでいる人って、悩みたいだけで答えは決まっていることがほとんどだと思うんですよ。嫌なことでも良いことでも、結局やるしかないんだから、悩んでいる時間がもったいない。特にトップになればなるほど即断即決をしないと、ピラミッドの構造上、下の人たちは全員待ち状態になります。もちろん決断する材料がないと判断できないこともありますけどね」

そんな鎌田氏の手腕もあってユーチューバーという職業は世間一般に広く名前が知られる存在となった。“好きなことで生きていく”姿にあこがれる子供たちも多いようで、今や「小学生がなりたい職業ランキング」の常連だ。では今後、ユーチューブがメディアの覇権を握るのか。鎌田氏の見方はこうだ。

「ユーチューブじゃないメディアのこともすごくドライに見ていますよ。今、企業さんがもし使うなら、ユーチューブじゃなくてTikTokだよって僕なら絶対言う。ビジネス的なサイクルでいうとユーチューブが一番だとは思うけど、流行をつくりたいならTikTokだし、今回のパリ五輪ではTVerが伸びましたよね。トレンドは日々移っているんです」

鎌田氏は23年にUUUMを“卒業”。今はユーチューブとは一定の距離を置いているようで「卒業した後は人並み以下しか見てない…」と素直に明かした。それでも、盟友・ヒカキンの結婚報告動画や第一子の誕生動画などはこまめにチェックしており「頻繁ではないけどタイミングがあれば今も当たり前のように連絡します」と言う。新事業でヒカキンと再び“タッグ”を組む可能性を聞くと「可能性はないって言うのもウソっぽいけど、現状(可能性が)あるかって言われると今は間違いなくない」とキッパリと断言した。

「これはヒカキンに限らず、何か(ビジネスの)オファーがあった時に、僕の判断基準は『面白いか、面白くないか』。それはどういう世界になるの?って興味があったらやりたいですね。逆に『それやったらもうかります』って言われるのが一番冷めるタイプ。もうかることよりも、楽しいことや新しいことがモチベーションで、すごく引かれるので、そういったことがあればチャレンジしたいですね」

とはいえ“次のビジネス”についてはまだ何も告知できない段階だという。「また同じことはしない」としつつ「この本が世の中に出た時の反応によって、自分がどう求められているのかを見極めて1年後に備えたい」と読者の反応も次のビジネスの糧にしていく。

本書のタイトルは「名前のない仕事」。光通信からUUUMまで、名前のない、前例もない仕事に取り組んできた鎌田氏によって名付けられた。

「今は究極の“種まき期間”というか。それがこの著書につながるところで、まさしく『名前のない仕事』なんです。たぶん皆さんも、仕事かわからないけど夜に誰かとご飯を食べたりすることがあって、そういうことが(仕事に)つながっていくと思うんです。僕の仕事の仕方も、それが仕事なのか遊びなのか何の時間なのか、もうあんまり気にしてない。いろんな人、いろんな出来事に出会って、結果そこからUUUMという会社もできました。そういう意味では(UUUMを)卒業してからもやってることは変わんなくて。種をまいて、いろんなことを待っているといった感じです」

大好きな漫画や雑誌、ゲーム作品のグッズに囲まれたオフィスから、鎌田氏が世の中に仕掛けていく新たな事業が楽しみだ。

☆かまだ・かずき 1983年12月3日生まれ。埼玉県出身。大学を中退し、19歳で光通信に入社。29歳でUUUMを設立し「ユーチューバー」を支援。2023年に卒業し、現在はKMD株式会社で代表を務める。

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