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京都発!ローソンが導入進めるクレーンゲームの可能性 カプセルトイを超える優位性が魅力

東スポWEB 2024年8月29日 20時4分

来店客の心も上手にキャッチできるか――。ローソンは今月5日、店舗内にクレーンゲームの本格導入を進めていることを発表した。実験店舗で見えた意外なポテンシャルは何なのか? 流通ウォッチャーの渡辺広明氏と担当者に話を聞き、実際にクレーンゲームをやってみた。

ゲームセンター(以下ゲーセン)の倒産が相次いでいる。帝国データバンクが今年4月に発表した資料によると、2023年度には18件の倒産や休廃業が発生し過去5年で最多を記録。ゲーセンの店舗数は10年間で8000店近くが減少しているという。

「新型コロナという大打撃からは抜け出したものの、電気料金の高騰や両替手数料の値上げ、新紙幣やキャッシュレス化への対応などあらゆる方面でコストが上がっています。にもかかわらず1プレー100円が浸透してしまっているので価格転嫁が非常に難しい。財務基盤が強くない中小のゲーセンにはどうにもならない苦境だと思います」(渡辺広明氏)

だが、大型店舗におなじみのクレーンゲームだけは伸びている。日本アミューズメント産業協会の2021年度調査では4492億円の売上高のうち、62・5%に当たる約2810億円をクレーンゲームが稼ぎ出した。設置台数も前年比123・9%の18万1607台でゲーセンの“顔”となっている。それがなぜスペースの限られるコンビニに導入されるようになったのか?

「実は、京都のFC加盟店オーナーさんからいただいたご相談がきっかけでした」と明かすのはローソンのエンタテインメントカンパニーの玩具担当マネジャー、村上慎治氏。

「コト消費に合わせて『クレーンゲームを入れてもいいか?』という内容で、2022年10月から3店舗とタイトーさんの独自の“店仕入れ”でやっていただきました。それがとても好評だったので翌23年春から大阪を除く近畿で正式に実験を開始。最適解を探しつつ今年4月から首都圏と中部にも広げて本格導入となりました。7月末時点で623店舗に設置しています」

京都といえば観光客、ゆえに真っ先にインバウンド狙いかと思いきや、最初に導入された3店舗(京田辺市、木津川市、和束町)が京都市内でも観光スポットでもないところが興味深い。「いわゆる田舎エリアだからこそ『コンビニで手軽に楽しんでもらいたい』というオーナーの熱い気持ちが生まれ、それがうまく届いたのでしょうね」(渡辺氏)

客層分析すると小学生から40~50代までと幅広い年代に遊ばれており、特に20~30代女子が多いという。流行のキャラクターのぬいぐるみが景品のメインで、推し活ブームも関係しているとみられる。もちろん外国人観光客にも人気で、インバウンドが見込める店舗では海外でも認知されているゲームのキャラクターに関連する景品を充実させるのが吉だという。

コンパクトなクレーンゲーム機(筐体)が充実し始めたことも追い風となった。

「1台あたりクレーン4機。これを2台設置し、計8種の景品が並ぶのを標準としました。タイトー様はクレーンゲームの老舗ですし、景品の補充や集金といった運営面やメンテナンスもお任せしています。店員の負担がまた増えるのではないかと心配もいただきましたが、(景品が)崩れたときに並べ直しをするだけですね」(村上慎治氏)

景品は130種超で立地に合わせて選ばれる。毎月1~2品の新商品がラインアップに加わるので飽きがこない仕組みだ。今後はキャンペーンとの連動、キャッシュレス対応、オリジナル景品の開発も視野に入れながら2025年度中に1000店舗設置を目指す。

渡辺氏はカプセルトイとの比較を交えながらこう解説した。

「とても楽しそうなビジネスですよね。今なおカプセルトイを置いているコンビニもありますが、カプセルサイズの主流が48ミリなので、クレーンゲームの景品サイズ80ミリのほうが大きくて訴求力があります。カプセルトイや一番くじが必ず何かもらえるのに対してクレーンゲームだと何も取れないことがあります。モノを売らないのに売り上げが立つというのはもしかしたらコンビニ史上初かもしれません(笑い)」

来店客の心をつかみ続けられるのか注目だ。

【実際にプレーした人の声】今日は取れませんでしたが、もう5~6回はこれで遊んでます。サンリオが好きなので、買い物に来たついでに見つけるとついやっちゃいます。(来店動機になるかという問いに)なりますね! ちょっとした楽しみなんだけど、それがちょうどいいというか。楽しいですよ。(50代女性)

☆わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」コメンテーター。Tokyofm「ビジトピ」パーソナリティー。

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