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【菊地敏幸連載#31】「ジャイアンツは二岡智宏を外してでも鳥谷敬をショートとして欲しい」

東スポWEB 2024年9月3日 11時5分

【菊地敏幸 辣腕スカウトの虎眼力(31)】2003年ドラフトの目玉は何といっても早大・鳥谷敬内野手でした。複数の球団が鳥谷の自由獲得枠を巡って、しのぎを削る争奪戦となりました。

秋ごろになると次第に志望球団が絞られ、巨人と阪神の一騎打ちの様相を呈していました。早い時期から誠意を示し、関係者とも良好な関係を築いてはいましたが、こればかりは人の心ですから。確証などというものはありません。そんな中、巨人のスカウトなのか関係者なのか、こんなお話が流れてきました。

「ジャイアンツは(当時の)遊撃のレギュラーである二岡智宏を外してでも、鳥谷をショートとして欲しいと言っている」

鳥谷は、近大でもショートして活躍し、逆指名で巨人入りしていた二岡を尊敬しているということでした。鳥谷自身の自己評価では、とても二岡さんに勝てるレベルではないと。現状、遊撃のレギュラーである二岡のポジションを動かしてまで…という姿勢に鳥谷が冷めてしまったのか、このあたりから流れが何となく阪神に向いてきた気がします。

当然ですが、阪神は遊撃のポジションを空けて待っているということは絶対にないよという姿勢でした。実際、03年にリーグ優勝した遊撃のレギュラーには3割打者の藤本敦士が君臨していました。

仮にスカウトの誘い文句であっても、藤本を動かして鳥谷に明け渡そうだなんて絶対に言いません。そんなのは藤本に失礼です。2月1日のキャンプが始まれば横一線で競争なんですから。

当日はくじ引きゼロの“無風ドラフト”でした。阪神は鳥谷を自由枠で獲得し、もうひと枠で筒井和也投手(愛知学院大)を指名しました。筒井はね、大学3年の時にとんでもないピッチングしていてね。

大学球界野手ナンバーワンの鳥谷と投手ナンバーワンの筒井を両獲りする話だったんですけどね。筒井は4年生の時にちょっと調子を落としてしまったんですよね。プロ入り直後は苦しみましたが、金本監督1年目の12年に58試合に登板するなど、貴重な左の中継ぎとして活躍してくれました。ただ、あれだけの体格をしていたのに、ちょっと人柄が優しいんだよな。現在は我々の次世代のスカウトとして球団に貢献してくれています。

そして4巡目は桟原将司投手(新日鉄広畑)です。ご親戚が有名なコメディアンのハナ肇さんなんだよね。桟原はお父さんが涙もろくてね。息子が活躍すると涙しちゃう熱い人柄でした。

5巡目が小宮山慎二捕手(横浜隼人高)。この高校はユニホームが阪神タイガースとそっくりなんですよ。黄色と黒を基調にしていてね。出身が厚木で、私の地元と程近い不思議なご縁のある選手です。現在は岡田監督の下、ブルペン捕手としてチームを支えてくれています。

そして最後の6巡目で庄田隆弘外野手(シダックス)です。03年に阪神にドラフトされた選手の中では最年長で、今でも同期で集まる時にはリーダー的な役割で、みんなをまとめてくれているそうですよ。現在は淡路島で野球少年の育成に携わっています。

この03年ドラフト同期たちは仲がいいですね。それにとどまらず、親御さん同士も仲がいいという珍しい世代なんですね。次回はそのあたりにも触れたいと思います。

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