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井上尚弥 ドヘニー戦は「凡戦」ではなかった…腰砕けTKOを誘発した〝極限の駆け引き〟

東スポWEB 2024年9月4日 5時6分

まさかの結末の〝深層〟とは? ボクシングの世界スーパーバンタム級タイトルマッチ(3日、東京・有明アリーナ)、4団体統一王者の井上尚弥(31=大橋)が、挑戦者のWBO同級2位TJ・ドヘニー(37=アイルランド)を7ラウンド(R)TKОで下して、王座を防衛した。最後はドヘニーが突然、苦悶の表情で腰を押さえてレフェリーストップ。豪快なKОシーンを期待したファンには〝消化不良〟にも映る幕切れは、モンスターの驚異のパンチが誘発したものだった――。

予想外の幕切れだった。試合は序盤から互いに慎重姿勢で静かな展開が続く。6Rに入ると、相手の動きに慣れた井上のパンチが次々とヒット。終盤には連打を浴びせ、仕留める時が近づいたかと思われた。ところが、続く7R、井上が再び連打を浴びせると、ドヘニーは腰に手を当てて棄権をアピール。ここでレフェリーストップとなり、勝負が決まった。

井上は「(ドヘニーは)少なからずダメージの蓄積はあったと思う。みなさんが期待していた試合内容ではなかったですが、長く試合をしていれば、こういう試合もある。理想としていた結果ではなかった」と不完全燃焼に終わった一戦を総括。ただ、モンスターにとっても想定外の結末は、その異次元の強さが誘発したものだった。

2019年に当時IBF同級王者だったドヘニーに挑んで11RTKO負けを喫した高橋竜平氏(34)は、取材に対し「ドヘニーが腰を痛めて途中で試合が終わって、最後まで見たかった気持ちはある。ただ、井上選手のハイレベルな一つひとつのフェイントや駆け引きが見られて、すごく楽しめた」と振り返った。

試合は1R目から、井上に対してドヘニーが攻めあぐねた。高橋氏は「井上選手は初回からすごく慎重に前の手(左)で圧をかけて、相手に出させないように慎重にやっているように見えた。(サウスポーの)ドヘニーは左を振った隙で、その瞬間に差されるから前に出ようにも出られなかったと思う。ドヘニーが少しでも動いた瞬間に(井上の)高速のジャブが飛んでくるから、後ろにしか下がれなかったと思う」と挑戦者にとって厳しい戦況を分析した。

そして7Rには、突然の〝腰砕け〟。試合後にドヘニーのプロモーターのマイク・アルタムラ氏は「6R目に腰にパンチが当たって、神経を少し痛めてしまった。(6R終了後に)コーナーに戻ってきて、しっかり立て直して戻れると思ったけど、7R目にさらに痛みが悪化してしまった」と説明した。

当日計量では井上が前日から7・4キロ増の62・7キロに対して、ドヘニーは11キロ増の66・1キロだった。この10キロ以上の〝巨大化〟が腰に過度の負担をかけたとの見方も一部にはある。ただ、ドヘニーは過去にも試合当日に12キロ以上も増やすなど、井上戦に限って極端な増量をしたわけではない。

高橋氏は「無理に体重を『増やす』と『戻す』では全く意味が違うと思う。たぶんドヘニーは(リバウンドで)普段の自分に戻るような感じで、後者の方だと思う。だから11キロ増量したから、腰をやったという因果関係はよくわからない」と指摘。一歩動けば〝驚異のジャブ〟が飛んでくる極限の駆け引きに始まり、中盤からは井上が攻撃のギアを一段上げたことで、挑戦者の腰が悲鳴を上げたと見ることもできる。これもモンスターの強さの表れだろう。

井上の次戦は、年末にIBF&WBO1位サム・グッドマン(オーストラリア)との対戦が有力。来年には米ラスベガスでの試合やWBC世界バンタム級王者・中谷潤人(M・T)との夢対決も視界に入る。今後もモンスターの戦いから目が離せない。

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