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【ソフトバンク】常勝復活託された小久保監督が貫き通した「信念のタクト」独走でも緩みなし

東スポWEB 2024年9月24日 5時8分

ソフトバンクが23日のオリックス戦(京セラ)に9―4で快勝。1938年に大阪で産声を上げた南海ホークス発祥の地で4年ぶり20度目のリーグ優勝を決めた。シーズンを通して借金生活は一度もなく最大連敗はわずか「4」、2位に11ゲーム差をつける圧勝劇でパ・リーグの覇権を奪回。ナインによって胴上げされた就任1年目の小久保裕紀監督(52)は8度、宙に舞った。常勝復活を託された将は、信念のタクトを貫き通した。

鷹が最後まで隙なく、油断なく歓喜のゴールテープを駆け抜けた。ホークスが誕生した大阪の胴上げも、また格別だ。指揮官に続き、孫正義オーナーも5度、宙に舞った。王貞治球団会長はナインと次々に握手を交わし、全員で喜びを分かち合った。

小久保監督は「2月のキャンプからこの日のためにチーム全員でやってきた。懸命に戦ってきた選手たちに胴上げされて本当に最高でした」と万感の思いを口にし「個々の選手が替えのきかない選手になり、集大成の9月を迎え連敗もありましたが、そこからはね返し、プロフェッショナルとしてやってきた結果だと思います」とナインをねぎらった。

率いる将は孤独だったはずだ。人それぞれに生きざまがある。それは宿命だったのかもしれない。現役時代から己を律し、ストイックに生きてきた。大ケガを乗り越え、本意ではない無償トレードも経験し、巨人では外様でありながら主将を務め上げた。球団の財産である「王イズム」を継承する一人。選手に〝真の強さ〟を求めた。

勝負どころの強さ、痛みへの強さ、自らを律する強さ――。それは時代が変わろうと、頂点を極めるために不変のもの。つい顔をのぞかせる「弱さ」を断つことは難しい。現場の最高指揮者として、信念を持ってタクトを振り続けた。率いる兵の退路を断ち、責任の所在を明確にした。「自分の城を築く」は小久保節の名ゼリフ。裏方を含めたチーム全員にプロフェッショナルの仕事を求めた。

実績を残した主力にも小久保流のメッセージを送り続けた。昨春WBCで日本代表として世界一に輝いた牧原大成内野手(31)は、首脳陣の要請に応える形で今季から「セカンド一本」で勝負。球界を代表するユーティリティープレーヤーは、おのずと覚悟を決めて臨んだシーズンだった。右脇腹を負傷して2か月以上、一軍戦列を離れる間に新人の広瀬が台頭。指揮官が牧原大をレギュラー枠で戻し、広瀬を入れ替わるようにファームに送った人事は深謀遠慮そのものだった。一定の力量を示した23歳は、将来的な正二塁手候補。10月に32歳を迎える牧原大は今後、有事を除いて突き上げに屈するようなことがあれば、そのままポジションを奪われかねない。その立ち位置を明確にし、退路を断った。あらがう中堅の〝もうひと伸び〟を信じた一手だった。

本塁憤死が相次いだ8月末には、三塁ベースコーチを担当していた井出外野守備走塁兼作戦コーチの判断を「もったいない」などと直接的に指摘し、同コーチの信念を問うた。

2人はともに1971年生まれ、公私で関係が深く、球団内でもよく知られた同志。私情を挟まず、忖度なく非難する姿は非情だった。就任と同時に胸に刻んだ「強いホークスを取り戻す」という使命。結果がすべてのプロにあって、それぞれの持ち場で責任の所在を明確にした。表向きは揺るぎない判断の連続だったが、人知れず苦悩や葛藤、大きな犠牲も払ったはずだ。

組織を束ねる上で、いつだって「厳しさ」のバランスは難しい。時にはハレーションを生む。それが政権交代の初年度であれば顕著だ。独走態勢を構築すれば現場に少なからず気の緩みが生じるのは自然。だが、シーズンを通してチーム内には常に緊張感があった。隙が生まれそうな要所で厳しさを前面に出し、嫌われ役をいとわない「強いリーダー」が信念をまっとうしたからに他ならなかった。

戦いは道半ばだ。日本一に向けての戦いがこの先も続くからだけではない。2025年以降も常勝再建の戦いが待ち受けている。パの覇権を3年失っていたチームを根元から変えるシーズン。「先の先」を見据えた小久保流のタクトがまずは一つ、結果を出したペナント制覇だった。

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