焦りは禁物――。巨人が23日の阪神戦(甲子園)で1―0と接戦を制し、連敗を2でストップ。優勝へのマジックを「4」に減らし、2位・阪神とは2ゲーム差まで広げた。悲願のリーグVに向けてまた一歩前進した阿部慎之助監督(45)率いる巨人。チームの結束力はますます高まっているが、その裏にはGナインの間で多用される「魔法の言葉」が存在していた。
劇的一打と執念の継投で勝利をつかんだ。まずは中4日で先発したグリフィンが5回無失点とゲームメーク。打っては0―0で迎えた7回無死一、二塁の場面で前夜はスタメンも得点圏で3度も凡退した坂本が代打で登場すると、相手先発の高橋から右前へ先制適時打を放ち、結局、これが値千金の決勝打となった。阿部監督の采配がズバリ的中し、喉から手が出るほど欲しかった1点をもぎ取った。
6回からマウンドに上がった2番手・ケラーも、今季初となる回またぎの投球で2回無失点と力投。その後、バルドナード―大勢とつないで零封リレーで逃げ切った。
阿部監督は「もう今日は全員でいこうと思っていたので。そこで打ってくれるのは、やっぱり…最後信じてよかったなと思います」と喜びをかみしめるように坂本を称賛。「マジックは出ていますけど、そんなの関係なく目先の1試合を勝つために全力で頑張りたいと思います」と勝ってかぶとの緒を締めた。
球史に残るシ烈な優勝争いを繰り広げている阿部巨人。指揮官も「こんなに、もつれることって俺も経験したことない」と吐露するほど過酷な状況の中、チーム内ではあるワンフレーズがナインのメンタルを支えていた。
それは新日本プロレス・内藤哲也選手(42)の決めゼリフとして日本でも一躍有名となった「トランキーロ!」。日本語に訳すと「焦るなよ」という意味を持つスペイン語だ。ある投手は「はやっているというか、みんな口癖のように普通に使っていますよ」と日常の一部として選手たちが口にしていることを証言。あるチーム関係者も「恐らくですが、バルドナードなどスペイン語を使う助っ人もいますし、口にしやすい言葉だから広まったのでは」と、その背景を分析する。
前出の選手は「もうこの段階になって焦ってもいいことなんて、一つもないですから。トランキーロですよ、トランキーロ!」と笑顔で連呼。口に出すことで気持ちを落ち着かせる精神安定剤のような役割も果たしているようだ。
泣いても笑っても残り6試合。Gナインは「トランキーロ」を合言葉に泰然自若で優勝をつかみ取る。