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【菊地敏幸連載#42】藤川俊介は3位までって言ってたのに…チョンボで5位指名

東スポWEB 2024年9月25日 11時3分

【菊地敏幸 辣腕スカウトの虎眼力(42)】2009年のドラフトの目玉は何といっても花巻東の菊池雄星投手(現アストロズ)でした。阪神を含む西武、ヤクルト、楽天、中日、日本ハムの6球団が競合。抽選の結果、西武ライオンズが交渉権を獲得しました。

クジを引いた当時の渡辺久信監督は花巻の地酒を飲み、花巻東のチームカラーである紫色のボールペンを持って験を担いでドラフトに臨んだそうですね。いの一番で当たりクジを引き当てた渡辺監督が力強く右の拳を突き上げたのが印象的でした。

阪神はというと法政大の本格派右腕・二神一人投手(現球団広報)を1巡目で指名。2巡目で立命館大の左腕・藤原正典投手、3巡目で福岡大・甲斐雄平外野手、4巡目で西条高・秋山拓巳投手と指名を進めていきました。秋山は先日、今季限りでの引退を表明しましたね。2桁勝利も経験するなどチームに貢献してくれました。

ドラフトでは1位候補は誰、抽選に外れた場合は誰、その後は野手では誰というふうに何通りものシミュレーションを行った上で指名を繰り返していきます。スカウト会議ではその方針を確認し合い、ドラフト当日はテーブルに座るおのおのが粛々と仕事を進めます。

私はドラフト当日、そのテーブルに座っていました。それぞれの球団によって違いますが、監督や球団社長、編成部長、統括スカウトのような面々で会議を進めていきます。私は5巡目指名となった段階でリストに目を落としていました。

すると、近大・藤川俊介外野手の名前が目に入りました。藤川が残っているんだったら指名しましょう。現場で私が推薦するような形で、指名に至り交渉権を獲得する流れとなりました。

これは担当の畑山スカウトも喜んでくれるんじゃないかな。そんなふうに思って、6巡目には帝京高の原口文仁捕手を指名。そこから育成2選手の指名に移り、全てが丸く収まるはずだったんですが…。これが事件に発展したんです。

ドラフト会場の控室に戻ったら畑山スカウトが青い顔をして私の方に歩み寄ってきます。「菊地さん、藤川の指名は3位までって言ってたじゃないですか…」。うーん、確かにそうでした。スカウト会議でも確認した事項であり、当時の私のメモにもそう書いてありました。これはもう完全に認めます。忘れていました。私のチョンボです。

俊介はドラフト会議の前に社会人野球の東邦ガスから採用内定を得ている状況でした。12球団に対し、3位以内の指名でなければ入社する旨も伝えられていました。

それでも5位で阪神に指名されたわけです。他球団から3位までの指名がなかったわけですから、俊介も突然の指名に困惑したことでしょう。あくまでドラフト指名を受け、プロ入りするかどうかの選択権は本人の意思によるところではあります。ですが、大学や企業との関係性を軽く見るわけにはいきません。

他球団からすれば地元の阪神が関西圏の近畿大の選手をあえて5位指名してきたわけですから、出来レースだったんじゃないかとの疑念も受けました。でも、違うんですよ。純粋に手違いで俊介をガチで5位指名してしまったんです。

これは困った事態となりました。

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