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【菊地敏幸連載#44】高橋周平が1位指名だと私は信じて疑いませんでした

東スポWEB 2024年9月27日 11時3分

【菊地敏幸 辣腕スカウトの虎眼力(44)】今回は2011年ドラフトについてお話しさせていただきます。球界ではドラフトの目玉は東洋大・藤岡貴裕投手、東海大・菅野智之投手の大学生2選手と、東海大甲府高の高橋周平内野手でした。

藤岡はロッテ、横浜、楽天の3球団が競合し交渉権獲得はロッテ。菅野は原辰徳監督のおいである経緯もあり、巨人が単独指名するものとみられていましたが日本ハムも強行指名。抽選の結果、日本ハムが交渉権を獲得し菅野が入団拒否で浪人するという事態となりました。

そして高橋周平はオリックス、ヤクルト、中日が競合し中日入り。阪神は単独指名で慶応大の伊藤隼太外野手を獲得するという流れとなりました。これがプロ野球の歴史としては過去の事実なのです。

ただ、その裏ではいろいろなことが起こっていました。実を言えば私は伊藤隼太も高橋周平も担当選手として調査を進めていました。長年のスカウトとしての私の目では、競合覚悟で高橋を1位指名したいという意見を持っていました。

とある球団幹部は慶大・伊藤を1位指名候補に強く推していました。当時の球団社長が慶大出身の南信男さんだったということもあり、伊藤1位指名の機運も高まっていました。

もちろん、ドラフト指名候補選手たちはアマ球界では将来性のある素晴らしい選手ばかりです。伊藤隼太も、その1人であることは間違いありません。

慶大では1年春から東京六大学リーグで活躍。2年春からレギュラーに定着し、3年時にはチームを11季ぶりの優勝に導きました。大学ジャパンの4番にも抜てきされ、世界大会で本塁打も記録しています。

一方で高橋は甲子園に縁はありませんでしたが、高校通算71本塁打を記録。高校ジャパンに選出されAAAアジア野球選手権でMVPに輝き、同大会での優勝に大きく貢献しています。この大会では木製バットにも対応していました。ちなみに甲子園経験者ではない高校生野手が、ドラフト1位で3球団競合というのは史上初めての出来事でした。

こうして書けば、2選手ともに甲乙つけ難い素晴らしい素材です。ただ、私のスカウトとしての評価で伊藤はドラフト1位で単独指名に値する選手かといえば、疑問がありました。

将来的なことを考えれば絶対に高橋周平が1位指名だと、当時の私は信じて疑いませんでした。もちろん、編成会議ではそういった主張を繰り返していました。

そんな中、一部スポーツ紙の報道などでは伊藤隼太を「高橋由伸2世」などとあおります。私は逆指名制度のあった時代、高橋由伸を担当スカウトとしてこの目で見ています。その評価は絶対に違うと思っていました。

この年の8月にはプロアマ交流戦で阪神の二軍と慶大が対戦しています。故障上がりだった伊藤隼太は代打で出場し安打を記録しています。そうなると伊藤推しの球団幹部は、さらに隼太にゾッコンです。

そして、最終的にドラフトの指名方針を決定する最後の編成会議での出来事でした。私は伊藤隼太を推す球団幹部とぶつかってしまう結果となってしまうのです。

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