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【菊地敏幸連載#47】「1浪中の菅野智之指名」をあえて球団社長に直談判

東スポWEB 2024年10月3日 11時4分

【菊地敏幸 辣腕スカウトの虎眼力(47)】今回は2012年のドラフトについてお話しさせてもらおうと思います。このあたりの話題だと最近になって阪神ファンになった方々も記憶に新しいんじゃないでしょうか。

注目選手は3年の甲子園で春夏を連覇した大阪桐蔭の藤浪晋太郎投手。藤浪は阪神、オリックス、ヤクルト、ロッテの4球団競合の末、当時の和田監督が当たりくじを引き当てて交渉権を獲得しました。

藤浪と同じく高校球界屈指の投手であり、打者でもあった花巻東高の大谷翔平投手は当初、大リーグ挑戦を表明していましたが、日本ハムが強行指名。現在のメジャーでの快進撃は毎日のように話題になっていますが、二刀流の伝説はここから始まっています。

その他では大学球界ナンバーワン右腕の呼び声が高かった亜細亜大の東浜巨投手がソフトバンクに入団。前年に日本ハムが交渉権を獲得するも拒否し、1年浪人した元東海大の菅野智之投手は巨人が単独指名することになりました。

この年のドラフトは普通であれば、誰が見ても大阪桐蔭の藤浪を阪神が獲得できてバンザイという雰囲気でしたよね。それはそれで王道なんですが、実は私は水面下で違う動きもしていました。

巨人の単独指名で念願かなった菅野を「獲得しましょう」と当時の南信男球団社長に直談判していたんです。私としては長年のスカウト生活の中で東海大とはラインをつくってある自負がありました。ウチであれば来てくれるんではないかと真剣に考えていました。

前年には日本ハムが強行指名しているわけです。その結果、巨人入団を希望して1浪している。そこでリスクを冒してでも菅野を指名すればどうなるのか。間違いなく戦力になることは分かっています。普通であれば地元・関西の藤浪でいかなきゃならないのは分かっていたんですよ。それでもあえて球団社長に直談判したんです。

社長は「ん~、無理でしょう」という空気でしたが、やってみれば面白いんじゃないのかと思っていました。皆さんはどう思われるんでしょうかね。

藤浪は入団当初は1年目の13年から15年まで3年連続で2桁勝利という結果を残しました。それはそれで成功ドラフトではあったと思うんです。ただ、現在の藤浪の姿はちょっと厳しいですね。

制球を乱して死球から崩れてしまう。そんな印象です。あの状態であれば捕手も右打者のインコースに直球を要求できないですよね。100マイルのストレートは凶器ですよ。内角に構えてぶつけてしまえば、自分の味方にも返ってきますから。

あれだけの能力を持ちながら、本人も捕手も相当なジレンマでしょうね。米球界移籍1年目の23年はアスレチックスから始まり、シーズン後半は優勝争いを繰り広げたオリオールズに移籍。シーズントータルで64試合7勝8敗5ホールド、2セーブという成績を残しました。

ですが、今季はマイナーからスタートして苦戦していました。このままでは米球界での活躍どころか、選手生命さえ厳しい状況でしょう。ポテンシャルが高いことは周知の事実ですが…。これはもう私がとやかくいう話ではありませんね。

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