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秋の夜長がアッという間!一気に読める厳選5冊 小学館出版局・学芸編集室・園田健也さんが紹介

東スポWEB 2024年10月6日 10時19分

10月に入り、季節は一気に秋めいてきた。秋といえば、やはり読書。そこで今回は「秋の夜長に一気に読める5冊」を小学館出版局・学芸編集室の園田健也さんに紹介してもらった。この5冊を手に取れば、秋の長い夜も短く感じることは間違いない――。

「力道山未亡人」(細田昌志著)

プロレスの祖・力道山未亡人である田中敬子さんの波乱に満ちた人生を描いたノンフィクションで「第30回小学館ノンフィクション大賞」受賞作です。プロレスの創成期という魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界で力道山の没後、トラブルに巻き込まれながらも力強く生き続け、83歳の現在も元気でいらっしゃる。

あまり資料のないプロレスの草創期の歴史もよく分かる。日本プロレスがやがて分裂していく流れの中でも、さまざまなドラマやトラブルがあり、闇の世界の人間も多く登場します。

プロレスに関係のなかった良家の子女が、夫の没後に22歳で5つの会社の社長に就任して30億円もの負債を背負い、プロレス界に巻き込まれながら生きていく。一人の女性の生きざまの数奇かつ壮絶なドキュメントです。プロレスに興味がない方でも、一気に読める本だと思います。

「国境のない生き方」(ヤマザキマリ著)

漫画家のヤマザキさんは「テルマエ・ロマエ」(2010年、手塚治虫文化賞短編賞)で有名になり、今では文化人的立場の方になりましたが、どのような人生を歩んでそんな人物が出来上がったのかが分かる自伝的エッセーです。

ヤマザキさんは北海道・千歳市で野生児のように育ったのですが、中学・高校とカトリック系の私立校に行かされたため、ぼうずにしたりチリチリ頭にしたりして、相当反抗したようです。

17歳でイタリアに留学させられ、絵で食べていこうと決心するのですが「お前は日本のことを何も知らない!」とイタリア人に批判され、三島由紀夫や川端康成、安部公房などの作品を読むようになった。特に安部公房の「砂の女」に感銘を受け、自分を形成していく経緯が書かれています。

ただイタリアでも悲惨な経験が多く、金のない詩人とつきあって子供ができ、どん底の貧困生活が続いて「こんな男といたら子供を育てられない!」と帰国して、漫画家として自立するに至ります。全体的におもしろおかしく明るいタッチで、前述の文豪やガルシア・マルケス「百年の孤独」、手塚治虫さんのマンガまで、たくさん本が紹介されているので、読書の新たな喜びが見つかるはずです。

さらに欧州、米国、シリア、中国などの見聞録も「めずらしい生き物を観察するような気持ちで読んでいただければ幸いです」とご本人は語っています(笑い)。

「九条の大罪」(真鍋昌平著)

がらっぱちでアウトロー的な弁護士・九条間人の活躍を描いた漫画で、大ヒットした「闇金ウシジマくん」(04~19年)の作者の最新作。「闇金――」と同じく「よくここまで踏み込んで調べたな」と驚くほど、警察や法律、犯罪の裏側を描いたディテールが見事です。

また、暴力団やそれ以上にタチの悪い半グレ集団など現代の裏社会、闇社会のリアルさを知る上でも格好の作品です。九条は厄介な案件ばかり引き受けてそれらの悪と対峙するのですが、不良弁護士でありながら弱い立場の依頼人のために闘っている姿が読んでいるうちに伝わってきます。

現在は12巻まで発行されていますが、さらに面白い流れになると思います。こちらも一度読み始めたら止まらない作品です。

「ファントム無頼」(史村翔原作、新谷かおる作画)

こちらは航空自衛隊の活躍をテーマにした漫画で「少年サンデー」増刊号で1978~84年に連載された人気作品の復刻版です。百里基地を舞台に航空自衛隊の戦闘機のパイロット・神田鉄雄とナビゲーター・栗原宏美のコンビが、F―4EJファントムⅡを自在に操って、あらゆるトラブルや困難を解決するのですが、ストーリーの豊富さに驚かされます。

離島に飛んだり、飛行船に乗っている人を救ったり…毎回手を替え品を替えて人助けをするのですが、読み切り形式なのによく毎回これだけのアイデアが出てくるなと。基本的に戦闘機のパイロットは厳しい訓練で1日が終わるはず。ところがこの作品には数々の人間ドラマと「よく思いつくなあ」という展開が楽しめます。

要因としては原作者の史村翔さんが、航空自衛官から漫画原作者に転身した経歴を持っている点が強いと思います。史村さんは「北斗の拳」の原作で有名な武論尊さんの別名なんですが、ストーリーテラーとしての才能はやはりズバぬけていますね。実にスッキリした読後感が味わえます。

「誘拐ジャパン」(横関大著)

ミステリー小説の名手である横関さんの最新作(28日発売)。「ルパンの娘」(深田恭子主演=フジテレビ系)など多くのテレビ、映画化されたヒット作を発表されています。

無職の若い女性が誘拐犯グループに巻き込まれてしまい、総理大臣の孫を誘拐して途方もなく壮大な要求を突きつけるというストーリーが主軸となっています。背後で指揮を執っているのはかつての政界の「キングメーカー」。その要求は世間にも公表され、国民の支持を得てしまう。物語はそこから想像もつかない方向へと二転三転し、大ドンデン返しの結末へ…という流れになっています。ミステリーとしては非常に水準が高い作品ですね。

発売前ですが、ゲラを読み終えた段階で抜群におもしろかったので、どうしても紹介したかった一冊です。読んだら止まらない痛快な作品ですので、ぜひご一読ください。

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