ボクシングの元ＷＢＡ世界スーパーフライ級チャンピオンの飯田覚士氏が９日までに、Ｘ（旧ツイッター）を更新。元プロボクサーで、１９６６年に静岡県清水市（現静岡市）で起きたみそ製造会社の専務一家４人殺害事件で一度は死刑が確定し、先月に静岡地裁が言い渡した再審無罪判決が新たに確定する運びとなった袴田巌さんの雪冤に言及した。
飯田氏はＸに「涙出た…良かった！！！」と投稿。ほかに「これから袴田さんの回復が進み、笑顔が増えていくことを期待します」との投稿で、４８年に及ぶ長期拘束で心身を痛めた８８歳の袴田さんの健康を祈った。
一貫して無実を訴えてきた袴田さん。逮捕から５８年にしてようやく、冤罪が証明される。検察側が８日、再審無罪に控訴しない意向を表明。重要な争点だった「５点の衣類」が「捏造」であったことも確定する。検察側はそれ自体は認めず有罪主張も翻していない一方、一度は高裁が再審を認めなかったり、検察側が決定に抗告を繰り返すなど袴田さんが長期にわたって法的不安定な状況に置かれてきたことなどを考慮し、控訴断念に至ったとみられる。期限は１０日だった。
飯田氏はＸ投稿で「長かった…、本当に。ボクシング関係者、のべ何人の人が支援活動したんだろう。雨の日も、吹雪の日も…。みんなの力が大きいけど、これまで一番苦しい戦いを続けたのは袴田さんと（姉の）ひで子さん」と感慨深げに振り返った。
袴田さんはフェザー級で日本ランキング６位に入ったボクサー。引退して地元静岡に戻り、事件の舞台となったみそ会社などで働きながら再起をうかがっていたところ、人生を狂わされた。
日本プロボクシング協会の袴田さん支援委員会のサイトによると、死刑が確定した８０年に発足した支援組織にボクシング関係者が参加。以後はボクシング界の総力をあげた支援が、さまざまな形で行われた。飯田氏も熱心な支援者の１人だ。
飯田氏は９０年、日本テレビ系「天才！たけしの元気が出るテレビ」の人気コーナー「ボクシング予備校」に出演して注目された。９７年に世界タイトルを獲得。引退後に「飯田覚士ボクシング塾 ボックスファイ」を設立した。