悪役プロレスラー・ダンプ松本の半生を軸に、１９８０年代の女子プロレス旋風とその陰の物語を描いたネットフリックス配信ドラマ「極悪女王」では、ダンプ松本役をゆりやんレトリィバァ（３３）、長与千種役を唐田えりか（２７）、ライオネス飛鳥役を剛力彩芽（３２）が務めた。プロレスラーとしての技量を含めた３人の演技力が高評価につながっているが、実際に技を教えたのは、ドラマのスーパーバイザーを務めた長与ではなくマーベラスの選手たちだという。
長与 女優さんたちの一番の師匠は（隣にいる彩羽匠、Ｍａｒｉａ、川畑梨瑚を指して）彼女たち。私は本番の時に動きに違和感があると、手を入れさせてもらったぐらい。
――女優さんたちの良いところは
Ｍａｒｉａ 基本を教えたのは私たちですが、学ばされることも多かった。目だったり、オーラだったり、素敵でした。
川畑 ゆりやんさんは勉強熱心。ダンプさんの当時の動きや手の出し方は相当勉強されていたと思う。あと、唐田さんは負けず嫌い（笑い）。めちゃくちゃ負けず嫌いだと思います。表には出さないけど（胸を押さえて）ここでずっとメラメラしているような。絶対にやってやる、という闘争心のようなものが見えた。剛力さんはもともと運動神経が良い方なので、言われたことをすぐ体に落とし込める。プロレスラーに必要なものを皆さん兼ね備えていらっしゃって、だからあんなにすごい作品ができたのだと思う。
長与 女優は目がいいです。本当に。何か変わりたかった、変えたかったんですね。きっと。でないとこのドラマのオーディションなんか受けない。でもその代償に、きつい練習があるよ、体を変えなきゃいけないよ、と。プロレスって技術が言葉なので、その言葉についていかなきゃいけないよ、と。それに十分なものを持っていた。女優の目を見た瞬間に「ああ、この人たち飢えてる」って思いました。飢えてるということは挑む事ができるし、負けず嫌いで、諦めない。その輝きを目で訴えてくる。目は口ほどにものをいうという言葉、誰が考えたんだろう、すごいと本当に思いました。
撮影現場ではお互いがインスパイアされていると強く感じたという。
長与 選手たちにいったのは、女優の目を見て全部盗みなさいと。選手たちは演者さん１人１人のお守り。何かあった時に駆け寄ってアドバイスする。夏の暑いときも、冬の寒いときも、朝６、７時から夜の１０時ぐらいまで。寝て起きてまた翌日も。どこかでポキンと折れるんじゃないかと思ったけど、折れなくてよかった。このリレーションシップがなかったら多分できなかった。今思い出しても、女優３人の目、めちゃくちゃいい。今はね、もう優しい目になっているんです。解き放たれたから。いくらファイティングポーズをとっても、あの時の目はもうない。でも、期間限定だったからできたんです。
Ｙｏｕｔｕｂｅのマーベラス公式チャンネルには「極悪女王」で女子プロレスに興味を持ち、古い映像を見たという声が上がっている。こうした新たな層が会場に足を運んだとき、ドラマを超えるリアルを見せ、新たな感動を与えることができるのか？
彩羽 自分は長与さんとダンプ松本さんの髪切りマッチを見て、プロレスラーになりたいと思ったんです。「極悪女王」にはその一戦が事細かに描かれていて、しかも全世界に発信されている。プロレスが好きだといったら友達に馬鹿にされることも多かった。でも、ほら見ろって感じですよね。全世界に注目される一戦だったということが証明された。そんなドラマを見て刺さった人たちに刺さるプロレスを自分たちもしているという自負がある。あのドラマがいいなと思ったら、一回来てください。見に来てもらえたら心を刺しにいきます。
長与 昭和の時代に女子プロレスができて、すべての環境が変わって、でも令和でもリングの中で戦う女の子たちがいる。どれだけおしゃれになっても、カッコいい洋服きても、泥臭くいてね、って思う。そうしないと人の心を動かせない。自分をさらけ出す。２７日もそんな風にしてくれたらいい。
彩羽 そうだ２７日、長与さん一曲歌ってもらえないですか？
長与 悪目立ちしたくない！
彩羽 名古屋国際会議場大会はスペシャルってポスターにあります。
長与 じゃあ、ぶっちゃけ、私が歌ったらあなたたちは何をしてくれますか。どんな試合をしてくれますか。でなきゃ私はやりません。
彩羽 スペシャル以上の試合をします。
長与 持ってる力を出し切ってくれるという約束をしてくれるんだったら、ちゃんとやります。
彩羽は里村との対戦で長与とファンの心を動かすことができるのか。結果は長与の熱唱でわかるのかもしれない。