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〝MLB版関ヶ原の戦い〟投票締め切り後もMVP論争過熱させるNYメディア

東スポWEB 2024年10月12日 11時40分

ドジャース・大谷翔平投手(30)を巡り、再びMVP論争が過熱している。前人未到の「54本塁打―59盗塁」を達成しナ・リーグMVPが本命視されているが、ここにきてメッツのフランシスコ・リンドア内野手(30)を推す声が本拠地ニューヨークを中心に強まっているのだ。全米野球記者協会(BBWAA)に所属する記者の投票はポストシーズン開幕前で締め切られているにもかかわらずなぜなのか。大谷が過去に受賞者のいないDH専任であることが影響している面もあるが、原因は東西対立にありそう。天下分け目の関ヶ原の戦いだ。

2024年のナ・リーグMVPは大谷が「大本命」と見て間違いはないだろう。今季は54本塁打、130打点でリーグ2冠に輝いた。史上初めて「54―59」の金字塔も打ち立てると同時に、日本選手初のトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁)を達成するなどこれ以上ないインパクトを残し、チームを地区V&ポストシーズン進出へと導いた。打撃成績もリンドアを圧倒している。

大半の米メディアの論調は3度目のMVPは確定で、注目は満票かどうかだ。しかし、ナ・リーグ東地区のベースとなっている米東海岸、特にメッツの本拠地ニューヨークのファンやNYメディアの考えは大きく異なる。ポストシーズンに入って以降、リンドアのMVP受賞を訴える声が再び強まっているのだ。

9月に入った時点で勝利貢献度を示すfWARでリンドアが大谷をリード。腰痛で欠場する前日の9月15日(同16日)時点で7・4で大谷の7・0を上回っており、東海岸派が「リンドアがMVP」を主張する根拠になっていた。「リンドアは毎試合、遊撃を守り、その守備はゴールドグラブ賞級。打つだけの大谷とは違う」。しかし、腰痛で8試合連続で欠場し、大谷の9・1に対して7・6と大差をつけられた。これで根拠を失い「MVP議論」も幕引きと思われたが、なぜか息を吹き返した。

9月30日(日本時間10月1日)のダブルヘッダー第1試合の敵地ブレーブス戦にリンドアは「1番・遊撃」で先発出場。“1勝でワイルドカードシリーズ進出、連敗すれば敗退”という運命の一戦で6―7と1点ビハインドの9回に決勝の逆転2ランを放ち、チームをポストシーズン進出へ導く立役者となった。
本拠地で8日(同9日)に行われたフィリーズとの地区シリーズ第3戦では8回にダメ押し適時二塁打。さらに9日(同10日)の第4戦でも0―1の6回一死満塁から逆転のグランドスラムを本拠地の右中間席へぶっ放し、チームは9年ぶりのリーグ優勝決定シリーズ進出を果たした。こうした活躍を受け、メッツファンとともにNYの地元紙「デーリー・ニューズ」が「もうナ・リーグのMVPは“ミスター・スマイル”(リンドアの愛称)をおいて他にいない」と論ずるなど異様な盛り上がりが一気に加速している。

しかし、投票はすでに締め切られており、いまさらリンドアへの1位票が増えることはない。そのことは東海岸のメディアも百も承知だ。それでもアピールするのはなぜなのか。それは西海岸への対抗意識だ。

ニューヨーク・ポスト紙のジョン・ヘイマン記者は9月8日(同9日)にリンドアのMVP獲得を阻害する要因として西海岸バイアス(偏見)を挙げている。「大谷が勝つ可能性が高いのは東海岸バイアスが誰かの嫉妬深い想像力の産物だからだ。これは完全にフェイクニュースだ。東海岸バイアスは非常に弱いので、どちらかといえば(西海岸が)逆転した。西海岸バイアスがあるかもしれない」。さらにメッツが誕生した1962年以降、「ドジャース6人、エンゼルス7人、アスレチックス7人、ジャイアンツ10人、パドレス1人、マリナーズ2人と西海岸の選手は33人。メッツから一人も受賞していない」と指摘した。

思い出されるのが2022年のア・リーグMVP争いだ。ア・リーグ新記録の62本塁打を放ったヤンキースのジャッジと、史上初めて投打のW規定に到達した当時エンゼルスの大谷の一騎打ちとなり、ニューヨーク・ポスト紙とロサンゼルス・タイムズ紙が論争を展開。「東海岸バイアス」「西海岸バイアス」が全米で話題になった。ジャッジが1位票28票を得て受賞したが、エンゼルス担当の2人が大谷へ1位票を投票したため満票を逃して波紋が広がった。

MVPは11月21日(同22日)に発表される。結果とともに東海岸メディアの反応も注目だ。

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