10月はピンクリボン月間だ。乳がんで亡くなる人や悲しむ人を一人でも減らしたいという思いのもと行われている啓発運動で、30年ほどの長い歴史をもつ。そんな乳がんについて、乳腺外科医の渡海由貴子先生に教えてもらおう。
――乳がんはどのような病気なのでしょうか?
渡海医師(以下、渡海)女性のがんで最も多いとされるがんです。乳房の中の乳腺という構造にがん細胞が発生します。この乳腺は男性にもあります。そのため、まれとはいえ男性も乳がんになることはあり得ます。ほかのがん同様、60代以降に増加傾向ですが、日本をはじめアジア特有の現象として40代の後半も多いとされています。
――生存率はどれくらいなのか気になります
渡海 乳がんは早期で発見できると生存率が高く、9割くらいの方が5年10年と生きられるがんです。ただ、やはり中には亡くなってしまう人もいて、年間1万5000人くらいの人が乳がんで亡くなっているという現状もあります。
――早く見つけることがポイントですね。早期で自覚症状は出ますか?
渡海 残念ながら、なかなか早期では自覚症状が出ないケースが多いです。自覚症状はしこりを感じたり、乳頭から血が出てきたり、左右に違いを感じるなどが代表的ではありますが、やはり進行した方が訴えられるケースが多いです。
――早期で発見するには、検査が大事ということでしょうか
渡海 その通りです。国の指針として、乳がん検診としてマンモグラフィーを2年に1度、40歳以上の女性に行っています。通知が届いたら、必ず受けるようにしてください。40歳未満の方も人間ドッグなどで受けることができるので、気になる方は検索してみてください。
――胸をマメに触るなどはした方がいいのでしょうか?
渡海「触る」というより、「ブレスト・アウェアネス」という考え方をぜひ知ってほしい。「胸を気にかける習慣」です。左右差がでてきたとか、今までと触った感じが違うとか、分泌物が出ていないかなとか、お風呂に入ったタイミングなどで意識を向けてみましょう。
――男性も気にかけた方がいいですか
渡海 もちろんです。男性こそ検診といわれるものが設定されていないので、「ちょっと今までと違うかもしれない」という症状を感じて受診されるケースが多いです。男性は、自分が乳がんになるわけないというような思い込みで、受診が遅れてしまうケースもあるため、意識を向けることはとても大事ですね。
☆とかい・ゆきこ T・Iクリニック長崎~乳腺外科・婦人科~院長。日本外科学会認定外科専門医、日本乳癌学会認定乳腺専門医。長崎大学医学部を卒業し、長崎大学附属病院乳腺内分泌外科などを経て現職。奇麗な手術と寄り添う診療をモットーとしている。