阪神は藤川球児新監督(44)を中心とする来季のコーチ人事を21日に正式発表した。新任の小谷野栄一打撃コーチ(44)、3年ぶりの現場復帰となった金村暁投手コーチ(48)などが名を連ねた中、ひと際異彩を放ったのがブルペンコーチ兼BC(ブルペンキャッチャー)に就いた片山大樹氏(49)だ。
1992年のドラフト4位で入団したものの、一軍出場がないまま2000年に引退。01年からBCに転身し、四半世紀近くタテジマを支えてきた筋金入りの〝裏方男〟だ。
歴代の投手陣から厚い信頼を勝ち取り、藤川監督も現役時代は投球練習の相手に片山氏を専属指名。的確な助言は常に重宝され、いつしか周囲からは冗談半分、本気半分で「片山コーチ」と呼ばれるようになっていた。しかし、藤川新体制の発足とともに「正真正銘のコーチ」へ大出世した格好だ。
片山氏はコーチとしての役割を「これまでやってきた仕事に、ほんの少しだけ毛が生える程度です」と謙遜したが、藤川監督は「名前や実績があるから〝いいコーチ〟というわけではない。裏方としての角度からしか見えないものもあって、僕はそれをすごく頼りにしている」と入閣理由を説明。かつての〝相棒〟の眼力は、火の玉右腕本人が誰よりも熟知している。
藤川監督は現役時代から頻繁に裏方スタッフを食事に誘っていたわったり、プレゼントを贈るなどの気遣いを欠かさなかったが、岡田前監督も同様だった。選手会長時代には、裏方スタッフも移動時に新幹線のグリーン車に乗れるよう球団に掛け合うなど、待遇改善に尽力。「裏方の人間たちは、選手やコーチたちの本音や情報をよく知っているからな」とチーム管理の一助としても活用していた。〝恩師〟の姿勢は新指揮官にも大きな影響を与えているはずだ。
阪神の暗黒時代に終止符を打った星野仙一元監督(02~03年)も、裏方スタッフだけでなく、選手の夫人や家族にまで気遣いを欠かさなかったことで有名。陰からチームを支える人間たちを大切にすることを忘れない姿勢は、良将の条件の一つかもしれない。