日本ハムの新庄剛志監督(52)が来季も指揮を執ることを24日に行われたドラフト会議で明言した。自身の去就に関して今季終了後は未定を強調し、ソフトバンクとのCSファイナルステージで敗退した後も「僕がどうするかはドラフト会議が終わった時に答えを出します」と話していた。だが、指揮官は今月上旬、続投への思いと来季のチーム構想についてひそかに打ち明けてくれていた。その切なる思いとは――。
新庄監督が自身の去就や来季構想について語ったのは今月7日、楽天モバイルで行われた楽天戦の試合前だった。当日は日本ハムのレギュラーシーズン最終戦が組まれていたが、グラウンドには無情にも大粒の雨が降り注いでいた。ナインや報道陣、チーム関係者の多くが本球場から離れた室内練習場に向かう中、指揮官だけは一塁側ベンチ横に残り、ぬかるんだグラウンドを一人で見つめていた。その数分後、記者だけがいる一塁側記者席に自ら歩み寄ると、いつもの柔和な表情で突然こう語り始めた。
「今日は最終戦ですけど、試合はやりたくないですね。このグラウンドの状態だと選手がケガをしてしまう可能性がありますから。それは避けないといけない。でも、昨日(6日)楽天さんとオリックスさんは大雨の中、試合を強行したんですよね。で、試合後には中嶋さんが退任を発表して…。一体、どうなってるんですかね」
この日の前夜、オリックスは今季最終戦を敵地・仙台で終えた後に中嶋聡監督(55)が辞任を電撃表明。新庄監督もこの一報には驚いたという。だが、当時は自身も去就を明言していない時期。敵将の胸中を察しながら自ら監督業への思いをこう打ち明けた。
「よその球団のことはよく分かりません。でも中嶋さんも何か思うところがあったから決断したのでしょう。(中日の)立浪さんもそう。本当はもっと(監督を)やりたかったと思います。そう考えると僕は幸せですよ。最初(監督就任1年目)から吉村さん(チーム統括本部長)をはじめフロントの方々が僕を信じてチームを任せてくれましたから。そこは本当にありがたいので。その気持ちには応えたいです。でも、実際に(監督を)やると本当に毎日、胃が痛くて(苦笑い)。チームを勝たせるためにいろいろなことを考えないといけませんから。選手の時の方がずっと楽でしたよ。自分のことだけを考えていればよかったですからね」
監督業は選手を預かり、実戦で育成しながらチームを勝利に導く手腕を要求される。同時にチームが強固になるにつれ、ファンや周囲の期待も膨れ上がる。その重圧や責任は計り知れない。
「チームの今後を考えるともう僕だけの問題ではない。だから少し時間が欲しいのです。それに(監督を)続けることになれば、今後はチームを今以上に強くしていかないといけない。もうトライアウト期間ではないですし、選手にも3年間で十分チャンスを与えましたから。これからはどの部分を(外部から)補強してチームをさらに強化するか。だから来季に向けた補強も球団にはお願いしたいし、その方向性も聞きたい。僕の頭の中には欲しい選手、いっぱいいますからね」
リーグ2位に躍進した今季を考えれば来季は周囲の期待もこれまで以上に高まる。そのためには現有戦力の底上げに加え新たな戦力も不可欠となる。だからこそ新庄監督はシーズン中から他球団のFA選手や外国人選手の動向を注視していたという。その事実を明かした上で具体名を次々と列挙。最後には笑みを浮かべてこう付け加えた。
「投手は何人いてもいいです。でもやっぱりまずは後ろ(救援陣)でしょうか。(補強には)お金がかかると思いますが(球団は)獲得してくれますかね。東スポさんからも(球団)社長やフロントにお願いしておいてください(笑い)」
奇策や奇抜な発想ばかりが注目されがちな新庄監督だが、真の姿はチームをこよなく愛し勝つための努力、研究を欠かさない。監督就任以降、その熱意は高まるばかり。だからこそ大切に育て上げたナインやチームを簡単に見捨てるわけはない。そんな思いが見え隠れしていた。
それから2週間以上がたったこの日、ドラフト会議の場でついに来季続投を明かした新庄監督。来季はどんなチームでリーグ制覇に挑むのか。4年目となる「大航海」には楽しみと期待しかない。