ドジャース対ヤンキースのワールドシリーズ(WS)が25日(日本時間26日)にドジャー・スタジアムで開幕。1981年以来の両軍頂上決戦に臨んでいるドジャース・大谷翔平投手(30)も悲願の世界一を目指し、メラメラと闘志を燃やしている。一方、舞台裏ではスーパースター獲得をいまだ諦められないヤンキースが大谷に秋波を送り、この期に及んでドジャースからの〝強奪〟をもくろんでいるという。
空前絶後の盛り上がりを見せている。43年ぶりのマッチアップとなったWSでのドジャースーヤンキース戦。それぞれ長きにわたって東西の雄と目されている両球団の頂上決戦は「極上の戦い」として、MLBファンのみならず全米を巻き込む形で一大センセーションとなっている。
その中でもひときわ、注目されているのが言うまでもなく大谷だ。24日(日本時間25日)の前日会見では両軍所属選手の各個別ブースが設けられ、ゲートオープンと同時に大谷が座った席に数多くのメディアが殺到。ヒートアップぶりを物語るように、制止する警備員の怒号が飛び交う事態となった。
この光景をもしかするとヤンキースの面々は苦々しい半面、垂ぜんの思いで見つめていたのかもしれない。特にヤンキースのフロントで編成トップの実権を握るキャッシュマンGMには「今後、水面下で将来的な大谷獲得の〝再願望〟をますます高めていく可能性がある」との指摘がMLB関係者の間で飛び交っている。
ドジャースと大谷は2023年12月に10年総額7億ドルの契約を締結。しかも同契約にはオプトアウト(契約破棄権)が含まれていないことも明らかになっている。事実上の「生涯契約」とも言い切れるだけに2033年末の期間満了を迎えるまで他球団が大谷を獲得できるチャンスなど、どう考えてもないように思えるが、ヤンキースは「何とかならないものか」とあの手この手を今も模索しているという。
背景にあるのは、ヤンキースが過去2度にわたって大谷にフラれ続けている屈辱だ。17年11月に大谷が日本ハムからポスティングシステムを利用してMLB挑戦を表明した際、ヤンキースは獲得に名乗りを上げたものの書類選考で落選。「評価」と「育成法」に関してビジョンを示しながらも大谷側に受け入れてもらえず面談にすら進めなかった。そして6年後の23年オフにFAとなった大谷の争奪レースに再び参戦したが、本人の心を射止めることはできず〝完敗〟。かねて最有力とされていたドジャースへ大谷は移籍した。
キャッシュマンGMともホットラインで今もつながっている元ヤンキースの関係者は、次のように明かす。
「ヤンキースはドジャースとの対戦が決まり、選手以上にフロントが盛り上がっている。その筆頭にいるのが、キャッシュマンGM。大谷を獲りたくても本人に全く相手にされなかった悔しさは心に残り続け、トラウマになっている。だからこそ今回のワールドシリーズでドジャースを倒し、ヤンキースの強さと魅力を誇示したい。ワールドチャンピオンになって大谷にもヤンキースこそが偉大なチームであり、誰もが憧れる球団であることを認識させたいのです」
仮に大谷がピンストライプに魅力を感じるようになり、いつか移籍してプレーしてみたいと心変わりすれば「ヤンキースにも〝勝機〟が出てくるかもしれない」(前出の関係者)という。
かつてアレックス・ロドリゲスがレンジャーズと01年1月に総額2億5000万ドルの10年契約を結びながら、後に高額年俸がチームの足かせとなって04年2月にトレードでヤンキースへ移籍した例もあった。「ロドリゲスのように、がんじがらめの長期契約でも『抜け穴』や『盲点』は必ずある。くしくもキャッシュマンGMはロドリゲス獲得の当時も現職としてアルフォンゾ・ソリアーノを放出要員とし、このスーパートレードを実現させた人物。そのキャッシュマンGMの大号令のもと世界中から敏腕をかき集め『オオタニプロジェクト』を結成し、大谷とドジャースの10年契約を何とか切り崩そうと目を光らせている」と同関係者は続けた。
とはいえ大谷が西海岸をこよなく愛し、身も心もドジャースにささげてプレーする姿勢は何ら揺るがない。ヤンキースの深謀遠慮とカラメ手に動じず、世界一の座をつかみ取ることができるか。舞台裏のせめぎ合いも目が離せない。