ボートレース戸田のSG「第71回ボートレースダービー」は27日、準優を勝ち上がった6選手によって優勝戦が行われる。1号艇を手にしたのは予選トップ通過で準優12Rも危なげなく逃げ切った峰竜太(39=佐賀)。1987年、1988年の今村豊さん以来、史上2人目のダービー連覇に王手をかけた。この歴史的一戦の戦況をボートレースファン歴46年の元天才ジョッキー・田原成貴氏(65)はどう見ているのか――。
【田原成貴氏が熱く語る】
私はボートレース戸田が大好きだ。舟券の相性や水面イメージとかではなく、物心ついた頃から愛着がある。理由は明白だ。私のおじにあたる田原洋一さんが埼玉支部に所属していたから…。幼少期の頃、洋一さんのあっせんがない休日に戸田ボートへ連れて行かれた記憶が今も鮮明に残っている。水面のバトルは見ず、遊具で遊んでいた。その時の原風景がまるでDNAに染みついたように、戸田への愛着が深くなっていった。だから今大会も戸田のレースを見ながら大好きなおじさんを思い出し、懐かしい気持ちに浸っている。
一方、戸田ボートにあまり良いイメージを抱いていない男がいる。ボートレース界のスーパースター峰竜太だ。よりによって私の大好きな峰さんが、私の大好きな戸田にネガティブな印象を持っているとはなんて皮肉なことか。だが、無理もない。通算103Vを誇りながら戸田の優勝は2009年11月の1回のみ。結果が出ていなければ好きになれと言っても無理な話だな…。と、思っていたのは今大会前まで、だ。連覇を狙う峰さんは、今節はとにかく「戸田攻略」に燃えているようだ。
3日目9R、5コースから見事なまくり差しを決めて1着。レース後のインタビューで戸田のイメージが変わったか? と問われると左手で小さな輪をつくって「ちょっと」とニッコリ。そしてファンに「戸田攻略できそうなので、ばく進していきたい」と約束した。その言葉通り峰さんは予選トップ通過を果たし、準優もインから他を寄せ付けない逃げ切り勝ち。優出を決めた直後のインタビューでレジェンドレーサー今村豊さんから「ダービーを連覇できるのはおまえしかいない。絶対に優勝してくれ」とエールを送られたことを明かし、最後は「戸田をもっと好きになれるようにしっかり逃げます!」と言い切った。
優勝戦は強豪が相手だ。2号艇の毒島誠選手、3号艇の桐生順平選手もエンジンは仕上がっていて手ごわい。しかし、今の峰さんなら他艇を完封して優勝できるだろう。なぜなら彼は戦う者として最もいい精神状態にあるからだ。相手がどうこうは考えず、ひたすら「戸田をどう攻略するか?」に集中している。そういう時の選手は本当に強いのだ。私は騎手をやっていたので分かるのだが、競馬でも他の馬やジョッキーのことを考えず、愛馬と一緒にレースに没頭している時のほうが勝利に近づく。今週の天皇賞・秋で言えば、人馬一体となって東京2000メートルをどう走るか?だけを考えればいい。そう、今の峰さんはまさに最強のゾーンに入っているのだ。
峰さん、私の大好きな今村豊さん以来となるダービー連覇を飾って私の大好きな戸田を大好きになってくれ! そして私はもっともっとアナタを大好きになるよ。