【ザ・ビーチ・ボーイズ/フレンズ(1968年)】
バンドが最も不遇だった時期の佳作。チャート的には全米126位とキャリア中、最低の売り上げに終わったがリーダーのブライアン・ウィルソンが「新たな音楽の創作」というプレッシャーから解放された穏やかさと「諦観」に満ちた切ないアルバムである。逆に英国では13位と評価は高かった。
ビートルズに対抗意識を燃やして66年に名盤「ペット・サウンズ」を発表するも、当時の評価は低く「スマイル」は未完成に終わった。過酷なセールスを強いられていたブライアンが本当の意味で「自由」になったアルバムである。
サーフィンもなければホットロッドもない。ただ淡々とバンド特有の完璧なハーモニーで日常を歌い、切なく美しいメロディーを奏でる。わずか25分30秒という短さではあるが「フレンズ」「パッシング・バイ」などの名曲が胸を打つ。次男のデニスも「リトル・バード」を作曲するなど成長を見せている。
いわゆる「ソフトロック」系のバンドにも大きな影響を与え、後年になって再評価されるようになった。さびしさを伴いつつも心が落ち着く不思議なアルバムである。ジャケットも美しいのでぜひアナログ盤で聴いてほしい。