エースを突き動かしたものとは――。全日本大学女子駅伝(27日、弘進ゴムアスリートパーク仙台発着=6区間38・0キロ)、拓大の不破聖衣来(4年)は2年ぶりに5区(9・2キロ)を任され、区間7位の30分21秒で杜の都を駆け抜けた。目標の優勝には届かなかったが、チームは2時間6分48秒の7位でシード権を獲得。不破は大学生活でケガに悩まされながらも、チームメートの支えを力に変えてきた。完全復活への道筋を開く〝固い絆〟を当事者たちが明かした。
表情は悔しさであふれていた。4位でタスキを受けた不破は東北福祉大、名城大に抜かれる苦しい展開。終盤のスパートで名城大を抜き返して意地を見せた。ただ、レース後には「本当に申し訳ない思いがずっとあった。最後は1人でもいいから抜き返そうと思った。1つでも前で最後終わりたかった」と声を詰まらせた。
1年時には同大会の5区で28分00秒の区間新記録をマーク。2年時も5区で区間賞を獲得した。しかし、その後はケガで駅伝から約2年遠ざかった。現在は今後を見据えた体づくりに注力しており、発展途上の段階。「練習内容は今から極端に変えるとかはないけど、練習とか大会に臨むにあたっての私生活の部分やメンタル面を強化していきたい」とリベンジを誓った。
そんな不破を間近で見てきたのが拓大の同期たちだ。主将の門脇奈穂(4年)は「初めて聖衣来に会った時は緊張したけど、ラフな感じで話してくれる。聖衣来的にもすごい人と見ないでほしいと思っているのを感じていた」とトップ選手ならではの悩みを察知。同期たちもエースを特別扱いしなかった。不破も「部屋でみんなでたこ焼きパーティーとかもしましたね」と笑顔で振り返るなど、大切な仲間として接してきた。
日常を彩る同期の存在は、不破にとって大きな励みとなっていた。「ケガとかで私がチームを離脱している時とかもメッセージをくれたり、戻ってきた時もいつも通り接してくれた。本当にそれに救われてる部分はたくさんあった」と感謝を口にする。チームをまとめた門脇には「同期としては本当にいつも心の支えにはなっている。私が出た駅伝は全て奈穂とつないだ。毎回奈穂が勢いをつけて持ってきてくれたので、自分も走り出せた。4年間一緒に戦えて感謝の気持ちでいっぱい」と素直な思いを伝えた。
下級生の頃から同期たちとは「一緒に何秒縮めようねと」と話し、お互いを高め合ってきた。「優勝で終わることはできなかったけど、拓大のメンバーで4年間優勝を目指せたのは自分の陸上人生の中ですごい宝物」。さらなる飛躍へ、拓大での経験を未来につなげていく。