新日本プロレスの「スーパージュニアタッグリーグ」Bブロック公式戦(27日、後楽園)で、YOH(36)、ロッキー・ロメロ(42)の「ロッポンギ・ヴァイス」がTJP(40)、フランシスコ・アキラ(24)の「キャッチ2/2」を撃破し開幕2連勝を飾った。
何度も猛攻にさらされて窮地に陥ったYOHだったが、敵チームの合体技2/2(サンドイッチ式ニーアタック)の同士討ちを誘うと、アキラにリバースフランケンシュタイナーを発射。最後はロッキーとの合体技ストロングゼロで逆転勝利を収めた。
今年4月の両国大会で「左肩関節前方脱臼」および「関節唇損傷」を負い長期欠場。完治後の今月14日両国大会では開場時間と同時に会場入りし、客席に観客がいない状態でリング上から復帰宣言を繰り出した。もはや常人には理解困難なレベルの奇怪行動だが、それがファンの心をつかんでいるのもまた事実だ。
「誰もやったことのないことをやりたいということで出てきたアイデアがあれだったんですけど。もともと欠場前からベルトを盗んだり、会見で馬(の面)をかぶったり奇怪なことをやっていて、そっちの方がやってて楽しいというか、やりやすかったので」と振り返るYOHも、かつては周囲が求めるものと自身の理想のギャップに苦しんでいた。
しかし、2020年6月の左膝前十字靱帯断裂で強いられた約10か月の長期欠場が転機になった。「僕はどうしていきたいんだろうって考えた時に、とがった部分を1個だけにしようと。一流のレスラーになりたい、それだけを目標にしようと思ったんです。後の評価は付随してくるもので、人気者になりたいとか、チヤホヤされたいという欲を一切なくしたんです」。SNSから距離を置き、会場の声援だけを情報源に自分の信じる道を突き進むことにした。
結果的にそれが性に合っていた。「(映画)『フォレスト・ガンプ』で、フォレスト・ガンプがひたすら走るシーンがあるんですよ。それにみんな付いてきて、振り返ったらこんなに人がいるんだって。(理想は)その感じですね」と説明。今回の欠場時に宮城県の実家で故アントニオ猪木さんの詩集「馬鹿になれ」を久しぶりに読むと「いろいろ自分の中で解釈できるものがあった」と、自身が新たな境地に突入したことを実感したという。
「その時代にないものを生み出したヤツが勝ちだなと。もちろん全部のベルトは取りたいですし、SHO君との物語ももっと膨らませて、もっとデカいところでやりたいというのはあるので。レスラーとしてエンターテイナーとして、シングルでもタッグでも俺が楽しませてやりたい」
唯一無二の〝奇才〟になりつつあるYOHが、新日本のリングに新たなる価値観を創造する。