国民は裏金議員にどんな審判を下したのか。27日投開票の衆院選は自民党が単独過半数を下回り、立憲民主党など野党が大きく躍進した。与党敗北の原因は自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題だ。疑惑のあった候補者は46人で自民党は一部候補を非公認にしたり比例重複を認めなかったりと厳しい姿勢をアピールしたが、国民の怒りを払拭するには至らなかった。
裏金議員らの明暗は分かれた。離党して無所属で戦う安倍派幹部だった世耕弘成氏は二階俊博元幹事長の三男である伸康氏に勝利。同じ幹部では非公認となった西村康稔氏は当選したが、下村博文元文科相、高木毅元国対委員長は落選。ほかに公認だが比例重複していない武田良太元総務相らも涙をのんだ。
裏金問題を巡ってトップクラスに注目度が高かった選挙区が丸川珠代元五輪相の東京7区と萩生田光一元政調会長の東京24区だった。
投票が締め切られる午後8時に最速で落選確定したのが丸川氏だ。元テレビ朝日アナウンサーの丸川氏は裏金問題で822万円の不記載が明らかとなり、公認されたものの比例重複が認められていなかった。
「この問題が起きてから今に至るまでのわが党の対応に国民の皆さま、地域の皆さまの理解が得られる状況になかったということだと思う。私も言葉の限りを尽くして説明させていただいたつもりですが、ご信頼を得るにはいたらなかった」
紺のスーツを着てこう敗戦の弁を述べた丸川氏だが、説明が十分だったとは言い難い。不記載について丸川氏は報道陣の取材に対し、「資金は(自分の)口座で管理していた」と説明。選挙中の討論会ではこの「(自分の)」という部分が一部報道に勝手に付け加えられたと主張。つまり、誤報だと訴えていた。
しかし、選挙中は演説などの日程を明かさないステルス選挙を実施。誤報だという主張を含めて自身の考えを有権者に伝える機会は減った。また、演説で「お助けください」と涙ながらに訴えていたとSNSで拡散され、編集者の箕輪厚介氏から「勘違いしてないか?」と疑問を呈されるなど批判が集中していた。公開討論会も出席したはいいものの、終了後の取材は拒否。討論会主催者は「必死でお願いしたのですがダメでした」と話していた。さらに丸川氏の夫、大塚拓氏も埼玉9区でまさかの敗戦を喫し、夫婦そろって〝ただの人〟に…。
丸川氏は今後について、「バッジはないが自民党の一員であることは間違いないので、自民党がしっかりやり直していけるよう、地域の仲間と一緒にわれわれがちゃんとしたスタートを切れるように力を合わせたい」と、再スタートをほのめかしている。
もっとも政界再挑戦までの間、メディア復帰もあり得る。政治家からメディアに進出したケースは、過去にゲス不倫の宮崎謙介氏が妻の金子恵美氏と一緒にコメンテーターとして活躍している。「このハゲー!」との暴言など秘書に対するパワハラで有名な豊田真由子氏も同様にメディアで活躍している。
アナウンサーとして活躍した丸川氏ならメディアの仕事もありそうだが…。今回の選挙で丸川氏の落選運動を実施した弁護士の郷原信郎氏は「丸川氏の場合は非常にイメージが悪い。裏金問題に『愚か者めが』発言とどっちも印象がよくないでしょう。簡単ではないのではないか。(宮崎氏の)不倫なんかは政治と関係ないから」と、裏金のイメージが尾を引くと指摘した。
続けて、「丸川氏は『助けてください』なんて言ったというが、権力者がなんで『助けてください』なのか。権力者は庶民・国民を助けるのが仕事でしょう」と苦言を呈した。
いくら元アナでメディア慣れしているとはいえ、国民の不信感は大きく、裏金のマイナス印象を拭いさるには時間がかかりそうだ。