阪神は24日に行われたドラフト会議で1位の伊原陵人投手(24=NTT西日本)ら支配下5人、育成4人の計9選手を指名した。
本番前日の23日には畑山俊二統括スカウトがこんな〝本音〟をこぼした。「ここ数年の傾向として(獲得したいと思える)選手が、今までと比べると少ない。育成などで高校卒業時点で先に指名される選手も多いので、大学・社会人の候補選手が少なくなってきている」。育成制度を活用し、各プロ球団が才能ある若者の〝青田買い〟に力を入れるようになった結果、人材供給源であるアマ球界から有力な選手が減りつつある。そんな認識をスカウト活動に20年以上も従事するベテランが示唆した。
当の阪神も球団史上最多となる育成4人。来年3月にファーム施設を兵庫・尼崎市内の大物(だいもつ)へ移転する。選手受け入れのキャパシティーが増えることで、今後はより育成選手の獲得に力を入れていくことが確実視されている。
少しでもプロに近い位置から支配下へのチャンスを狙いたい若者。一方、NPB球団側からすればローコストで有望な才能を早くから手元に置き、ハイリターンを狙える。両者の利害が一致する限り、もはやこの流れは止まらないだろう。育成制度拡大に伴う弊害については岡田彰布前監督(66)も以前に何度か警鐘を鳴らしていた。
「育成でいっぱい(プロ球団が)選手を獲りすぎてしまうとアマチュアのレベルが下がるやんか。そうすると大学や社会人がしぼんでしまうんや。ええピッチャーがおってこそ、ええバッターが育つんやからな。それは野球界にとってはマイナスちゃうかな」
アマ球界の〝空洞化〟は結果として、プロも含めた球界全体のレベル低下につながる可能性すらある。育成でプロ入団した結果、かえって激烈な競争の中で埋もれてしまい、若くして支配下への夢を断たれる若者も少なくない。
広大で肥沃な裾野に支えられてこそ、ピラミッドの頂点は高い位置で光り輝く。人材獲得のスキームそのものが変化しつつある今、〝持続可能な野球界〟のあり方も模索しなければならないのかもしれない。