米大リーグのドジャースとヤンキースによるワールドシリーズ(WS)第4戦(10月30日)で、ドジャース・ベッツのグラブからヤンキースファンがボールを抜き取る暴挙が問題となったが、その一方でドジャース・フリーマンの本塁打をキャッチした〝男気〟ファンがいた。
同じ第4戦の初回、フリーマンが放ったのは、史上初のWS6試合連発となる先制2ラン。打球はヤンキースファンで埋まる右翼席に飛び込み、マーカス・クラインさん(51)がキャッチした。オークションに出せば6桁(10万ドル=約1530万円)はくだらない記念球だったが、迷うことなくフィールドに投げ返した。
クラインさんは「観客を盛り上げるためにはどうすればいいかを考えました。何人かの人が来てボールの重要性を話していたが、私に後悔はない。これはお金よりも大事なこと。お金が目的ではないという本能が働きました。その後、打者は生き返り、スタジアムは熱狂して最高だった」とその時の心境を「ニューヨークポスト」に語っている。
大谷翔平の50号が439万ドル(約6億7000万円)で売却されるなど、フリーマンの記念球も高値がついたはず。しかし、クラインさんはアウェーチームが放ったホームラン球は投げ返すというヤンキースファンの伝統に従い、チームの反撃を信じた。「ボールの重要性は分かっていたが、ヤンキースをよみがえらせる事の方がはるかに重要だった」という。
クラインさんの願いが通じてチームは11―4と大勝し、第5戦へと望みをつなげた。ベッツのボールを強奪した無法者が批判される中、男気あふれるファンもいる。