番長がハマの夜空に5度、宙を舞った。日本シリーズは3日、横浜スタジアムで第6戦を行い、DeNAがソフトバンクに11―2で激勝。4勝2敗とし、1998年以来26年ぶり3度目の日本一に輝いた。セ・リーグ3位から勝ち上がり、下克上を成し遂げた三浦大輔監督(50)は就任4年目で初の胴上げ。本拠地でナインやファンと喜びを分かち合った。
日本一が決まった瞬間、一塁側ベンチの三浦監督は両手を突き上げて感情を爆発させた。その後はコーチ陣と抱き合い、涙で顔をくしゃくしゃにしながら号泣。マウンドに向かってから間を少し空け、選手やコーチ陣らスタッフに囲まれると歓喜の胴上げが始まった。5度宙を舞った指揮官の表情にもう涙はなく、自然と笑顔があふれ返っていた。
優勝監督インタビューで壇上に立つと「もう最高にうれしいです。ありがとうございます」と口にし「いろんな思いがね…。98年に優勝してからその後、なかなか勝てずに。自分も『もう一度』って気持ちで…。現役の時は優勝できずに、監督として本当に優勝できてうれしいです」とも続けた。
そんな「番長」こと三浦監督が、ついに日本一の指揮官にまで上りつめた。万感の思いだ。振り返れば、就任1年目の2021年2月、宜野湾キャンプで初めて囲み取材に参加した。三浦監督は囲みの際「何かないですか、もういいですか?」と質問を促すのが常。おかげで、われわれもいろいろと疑問点をぶつけやすい指揮官でもある。
日本一への道のりは逆境から始まった。1年目は新人監督史上最悪の開幕6連敗(2分け)。4月早々、番長ベイは最下位からの船出となった。
そうした中、三浦監督は異色の独自采配を断行する。そのひとつが捕手3人制だ。今季は山本を正捕手に固定して3位を勝ち取ったが、昨季までは今永(現カブス)に戸柱、東に山本、バウアー(今季はメキシカンリーグのレッドデビルズでプレー)に伊藤と、組ませる捕手を変えていた。
「三者三様というか、誰もが見劣りしないぐらいの力を持ってるし、いいリードをしてますから。相川(ヘッド兼)バッテリーコーチと話し合い、投手との相性も考えて誰を使うか決めます。1年間戦う(捕手の)体力的にもこのほうがいい」
そう言って3捕手に定位置争いをさせ、今季は攻守両面で成長した山本を固定。正捕手に据えることに成功すると、かつての3捕手制はまったく振り返ろうともしない。
打線の組み方も指揮官の専権事項。打撃担当の石井、鈴木、田代コーチらの意見や提案を聞いてはいるが、毎試合、最終的な打順を決めているのは常にひとりだけだ。
オーダーは「固定するのが理想」と言いながらも、投手出身だからか、打順に対するこだわりはない。ラミレス監督時代の4番だった佐野の打棒が湿ると、代わりに主将・牧を4番に抜てき。その牧も調子を崩すと、思い切って2番に入れ、満を持して故障明けのオースティンを4番に据えた。
牧と同様、現役時代に主将と4番を務めた横浜OB高木由一氏は、tvkの中継解説でこの起用法を批判。「牧を4番と決めたのならシーズンを通して4番で使い続けるべき」と指摘した。だが、三浦監督はこう言う。
「牧は苦しんでいたので(2番で)気分も変わるし、『楽しんでこい』と言った。2番だからって2番の打撃をすることはない。いつも言ってますけど、自分の打撃をしてくれればいいんです」
そんなふうに主力選手を気遣う一方で、若手には厳しい一面も見せる。4月に本拠地でデビュー登板させた3年目の小園健太投手(21)が、3回途中7安打5失点でKO。次のチャンスは与えるのかと聞いたら「チャンスはつかむものです」とピシャリ。翌日に登録抹消して、二度と一軍に上げていない。
序盤に旋風を巻き起こしたドラフト1位の新人・度会隆輝外野手(22)も番長に叱責された。外野守備で風に流された打球を捕り損なうと「ここは本拠地。風があるのはわかってるはず。言い訳はできない」と指摘。短期決戦のCS、日本シリーズに呼ぶことはなかった。
いつもは温厚で冷静なようで、時に厳しい采配、鋭い言葉を発するようになった三浦監督。「横浜進化」は「番長進化」なのかもしれない。