〝駆け引き〟は早くも始まっている。全日本大学駅伝(3日、愛知・熱田神宮西門前~三重・伊勢神宮内宮宇治橋前、8区間106・8キロ)で王者奪還を目指した青学大は、5時間10分41秒で3位。頂点の座は国学院大に譲るも、来年1月の箱根駅伝に向けて多くの収穫を得た。原晋監督(57)が今大会に補欠を帯同せずに臨んだ狙いとは――。
「イーゴ大作戦」を発令した今大会は、2区で鶴川正也(4年)が先頭に立つと、7区終了時点で首位をキープ。最終8区で塩出翔太(3年)が力尽きたものの、指揮官は「(ワシのように)4区くらいまでは高く飛び上がったけど、そうしたら偏西風に乗って違うところにゴールしちゃった」と笑い飛ばした。
6年ぶり3度目の優勝には、あと一歩届かなかった。それでも「補欠はいないので(当日変更で)変えることはない。やってくれよ」とハッパをかけた各選手が力を十二分に発揮。箱根駅伝を見据える上で「簡単に勝てない時代になっているけど、出雲でも全日本でも過去10年ほどを見た時に、ほぼ上位に入っているので力は十分ある。区間が伸びて距離が伸びてくれば、青学の力が発揮できると思う」と一定の手応えを口にした。
箱根駅伝で無類の強さを誇る青学大は、直近10年で7度の総合優勝を達成。出雲駅伝、全日本駅伝で2位に入った駒大の藤田敦史監督も「10人が10人(大きなミスなく)走ってくる。そのピーキング能力は非常に怖い」と青学大を警戒するが、すでに先手は打っている。
青学大では1~3日にかけて「青学祭」が行われ、青山と相模原の両キャンパスの授業が休講。練習にはもってこいのタイミングだ。「箱根に向けて強化をする時期という点も踏まえて、現地に来ると補欠の選手たちが練習ができない」との理由から、必要最低限の人数で伊勢路に参戦。指揮官は補欠なしで挑むことで出走選手の自覚を促し、さらには補欠選手の練習時間も確保したのだ。
約2か月後の箱根駅伝は2連覇を懸けた一戦となる。「他大学に目を向けるんじゃなくて、我々が当たり前のことを当たり前のようにやっていく。箱根駅伝を一つのターゲットとして、逆算してやっている」。名将はしたたかに戦略を練っている。