米ニューヨーク州環境保全省は先日、インスタグラムなどSNSで人気のリス「ピーナツ」を殺処分した。元は野生で、人に7年飼われていたリスだったが、職員がかまれたことから、狂犬病の検査を行うための処置だったという。この殺処分が全米を揺るがす騒動に発展している。主要米メディアが報じている。
ニューヨーク州在住のマーク・ロンゴさんは7年前、車にはねられて母リスを失った赤ちゃんのピーナツを保護。ミルクを与えて育てた後、野生に戻そうと放ったが、戻って来たため飼い続けたた。その後、ピーナツのアカウントのインスタグラムを作成。なついた様子や芸を仕込んだ様子をアップし続けると、人気者となった。
2人の絆が注目を集め、2023年4月に「ピーナツ・フリーダム・ファーム・アニマル・サンクチュアリ」を設立した。
しかし、10月30日、同省が「狂犬病を媒介する可能性のある野生動物の危険な飼育や、野生動物をペットとして違法に飼育しているという一般からの複数の報告を受けて調査を実施した」として、ロンゴさん宅に立ち入り、ピーナツを押収した。押収の際、ピーナツが職員の手をかんだという。
その後、同省はピーナツの狂犬病の検査を行うために、安楽死処分したと声明を出した。同時に押収されたアライグマのフレッドも処分された。
同省に複数の報告が寄せられたことで、ピーナツが殺処分されたことに、ロンゴさんは「インターネットの皆さん、あなたたちは勝ったのです。あなたたちは自分の身勝手さのせいで、最も素晴らしい動物の一匹を私から奪ったのです。州環境保全省に電話した人たちには、地獄に特別な場所が用意されている」と非難した。
ピーナツのインスタグラムのフォロワー数は生前約42万だったのが、死後、約68万に急増した。それほどまでに話題となっている。多くの人々から州政府の権限の行き過ぎによる犠牲者とみなされ、ロンゴさんは〝英雄〟となった。
米紙ニューヨーク・ポストに、ニューヨーク州第23選挙区を代表する共和党下院議員ニック・ラングワーシー氏は「今回の襲撃は州政府の権限の濫用だ。キャシー・ホウクル州知事は襲撃が行われた明確な理由を示していないため、これらの質問に答える必要がある」と語った。
また、ジェイク・ブルーメンクランツ州議会議員は、動物の権利に関する法律を改正する法案を提出し、その法案を「ピーナツ法:人道的な動物保護法」と名付けた。この法案は、保護施設の動物を安楽死させる前に72時間の待機期間を義務付け、控訴制度を創設するとともに、動物保護施設に「人道的適正手続きを受ける権利」を与えるものだという。
さらにニューヨーク市長選への出馬を視野に入れていると報じられているアンドリュー・クオモ前知事の広報担当者は、ホウクル政権によるピーナツの取り扱いについてX(旧ツイッター)で批判。騒動は拡大している。