NPBは5日からFA有資格者が権利を行使するための申請期間に突入。大山悠輔内野手(29)、坂本誠志郎捕手(30)ら複数の主力選手との残留交渉に臨む阪神にとっても、正念場となる季節が到来した。新指揮官・藤川球児監督(44)は現在、高知・安芸で行われている秋季キャンプに参加中。来季の球界の構図を大きく塗り替えるであろうFA制度に対して抱く思いは――。
4日に甲子園球場クラブハウスを訪れた坂本は「何も決まっていないので話せることはない。いっぱい悩んで考えているところ」と、権利の行使については熟考中であることを強調。大山は報道陣の取材に応じることなく、施設内へと姿を消した。
本拠地から遠く離れた南国土佐の青空のもと、若虎たちの鍛錬を見守っている藤川監督は、練習終了後の記者囲みで「一番は彼らが何を選択することが、自分にとっての幸せにつながるか。選択するのは彼らの権利」と選手個々の判断を尊重する構えを強調。「残留しなかった時に、昔なら『裏切り者』のようなイメージもついた。そういうものは自分としても変えていきたい」とも語った。
自身も現役時代の2012年オフに海外FA権を行使。米球界→独立リーグを渡り歩いた後、古巣阪神に復帰した。「タイガースの伝統と文化の継承」を重んじる姿勢からは〝タテジマ純血主義〟的なイメージを抱かれることもある火の玉男だが、移籍制度自体に対しては肯定的な立場をとっている。
現役最晩年となった20年シーズンの開幕前には「今の阪神はもっと積極的にFA補強をすべき。積極的に選手獲得に動いたチームがリーグを制していることは事実」と取材を通して提言。、当時の球界の情勢を踏まえた上で一歩踏み込んだ発言をし、移籍市場への積極的な〝介入〟を促したことすらあった。
大山、甲斐(ソフトバンク)ら目玉選手の他にも、実力を伴った〝お手頃選手〟たちが多く顔をそろえる24年のFA戦線。最重要課題が現タテジマ選手たちの引き留めであることは間違いないが、新指揮官の意向のもと、ここから積極的な〝攻め〟に転じる可能性もあるのかもしれない。