〝微妙な判断〟がなければ快挙はあったのか――。F1ブラジル・グランプリ(GP)決勝が3日(日本時間4日)に行われ、RBの角田裕毅(24)は雨天で大荒れのレース展開の中、7位入賞を果たした。3番手スタートから表彰台も狙える快走だったが、セーフティーカー(SC)導入のタイミングに泣かされて自身初の快挙は消滅。物議を醸した国際自動車連盟(FIA)の判断について、モータースポーツジャーナリストの小倉茂徳氏(62)が解説した。
RBのマシンは雨コンディションの調整がハマり、角田は予選で自己最高の3位。決勝でも前半は激しいバトルを制しながら3位を維持した。
初の表彰台が視野に入る中で29周目にピットインすると、上位勢がすべてインターミディエートタイヤ(小雨用)を選ぶ一方で、角田はフルウエットタイヤ(大雨用)を選択する大バクチに出る。そして角田が6位でコースに戻った途端に雨脚が強くなり、フルウエットタイヤにとって絶好の展開に。上位勢でただ一人、ケタ違いのペースを見せ、一気に首位奪取まで射程に入れた。
しかし、その直後に大雨が危険と判断したFIAは追い抜き禁止となるSC導入を決断。角田は順位を上げられず、レースはフランコ・コラピント(ウィリアムズ)の事故でそのまま赤旗中断に。果敢なタイヤ選択は無意味になってしまった。
もしSC導入のタイミングがもう少し遅ければ、角田がごぼう抜きしていた可能性が高く、FIAの判断については議論が沸騰した。
小倉氏は「インテルラゴス(サーキット)は雨が多くて降り方も変わりやすい。さらに傾斜地にあるので、コース上に水の流れやたまった場所ができる。しかも決勝は朝から雨でコース脇に水がしみ込んで、そこからも湧き出てくる状態だった。ブラジルの国内レースでは、死亡事故も出ている」と会場の特性を指摘。
そうした点を踏まえてFIAの判断を「安全を考えると、ちょっと早めに(SCを)入れなくてはということだろう。我々が見ているより、コース各所から情報を得られる。視界の悪化もあった。現場の判断がより正しいと思う」と妥当との見解を示した。
それでも展開次第で角田の大躍進もあり得ただけに「本当に残念だとは思う。もうちょっとSCや赤旗がなかったら、どこまで行ったんだろうと見てみたかったが…」と本音ものぞかせた。ただ、多くのドライバーが苦戦を強いられる過酷な状況で、角田の技術が光ったのは間違いない。
小倉氏は「あのコンディションの中で、車のコントロールが非常にうまかったので、角田裕毅というドライバーがものすごく正確で繊細なドライビングができると見せられた。ドライバーの評価としては上げたはずだ」。快挙こそ逃したが、強烈なインパクトを与えるブラジルの激走だった。