来年の春までは静かな駆け引きが続く。少数与党となったことで石破内閣は風前のともしびとなっているが、奇妙な現象が起きているのだ。大手紙には社説で退陣を求める意見が載っているものの、世論調査では石破茂首相は辞任をしなくてよいという意見が多数派。自民党も野党も石破おろしの機運はない。
衆院選で落選した牧原秀樹法相、小里泰弘農相の後任として、法相に鈴木馨祐元財務副大臣、農相に江藤拓元農相が浮上。人事に着手するだけでなく、石破氏は中国の習近平国家主席との会談に意欲を燃やすなど続投の意志を持っている。
自公で過半数割れとなったが必ずしも石破内閣にNOとなったわけではない。衆院選直後に行われた共同通信社の世論調査によると内閣支持率は32・1%と就任して約1か月とは思えない低い数字を叩き出している。しかし、石破氏の首相辞任については「必要ない」が65・7%だった。JNNの調査でも辞任不要が70%を超えている。
自民党内も即時石破おろしという空気感ではない。反石破派の筆頭として有力視される萩生田光一元政調会長も事務所X(旧ツイッター)で「いずれにせよ議席を失った同志の分まで頑張り、まずは補正予算の成立に向け力を発揮してまいります」(1日)と、当面は目の前の仕事に注力するとしている。永田町関係者は「今、総理総裁を替えても少数与党という状況は同じ」と指摘。嫌でも石破氏に任せるしかないのだ。
野党側も無理に石破氏を引きずり降ろそうというムードにはなっていない。躍進した国民民主党ばかりが注目されているが、野党第一党の立憲民主党の動きは静かだ。ある立憲議員は「石破内閣はもう持たないだろう」と予想した。
その上で、立憲の立場を説明。「当選した議員らで集まる機会があって、幹部はその場で言わなかったけど、気になる点があるんだ。衆院選の比例区での票が前回と比べてあまり伸びなかっただけでなく、小選挙区の得票数はむしろ減っている。この分析が必要だ」(同)
総務省は衆院選における届出政党等別得票数を発表しており、小選挙区で立憲は約1570万票を得ていた。3年前の衆院選では約1720万票で、約150万票も減らしている。民意を背景に政権交代を迫るという数字ではないのだ。
「国民民主党が調子いいが、立憲民主党はコツコツやる。いずれにせよ石破内閣は来年の春に予算案成立を花道として退陣する可能性がある。参院選は新しい総理総裁でやるんじゃないか。勝負は参院選だろう」(同)
辞任不要という世論調査と与野党それぞれの事情で石破内閣はなんとか春までは持つかもしれない。