9日開幕の国際大会「第3回プレミア12」に臨む井端ジャパンへ〝金言〟だ。前回大会で日本を初優勝に導いた元侍ジャパン監督の稲葉篤紀氏(52=日本ハム二軍監督)が取材に応じた。20代中心で臨む今大会は日本の野球振興に先頭に立ち、選手としての価値向上にもつながると力説。現指揮官の井端弘和監督(49)とは2021年東京五輪で金メダルに輝くまで5年間にわたって首脳陣として共闘した縁もあり、プレミア連覇を祈念している。
――プレミア12が5年ぶりに開催される。オフの11月はメンバー選考など難しいところも…
稲葉氏 もちろん、簡単ではないよ。でも、若い選手たちが、ああいう舞台を経験することは絶対にプラスになる。代表メンバーって選んだら選んだだけ、いろいろな人から、いろいろなことを言われる。でも監督がやりたい野球で選んだ選手たちが「一番いいメンバー」。これは絶対に言える。中にはケガで参加辞退する人もいるけど自分が監督だった時も、それを不安がったら絶対にいけないと。試合では常に送り出す選手に自信を持っていたし、信頼もしていたからね。
――前大会の直前には沖縄の強化試合で秋山(当時西武)が死球で骨折。代役招集の丸(巨人)が大会で活躍した
稲葉氏 当時の丸選手は巨人で日本シリーズを終えた後で、全く動いていない状態。それでも出場の打診に「本番には必ず合わせます」と言ってくれて。日本のためにっていう、本当にそういう思いを持っている選手。そういう気持ちをもって、侍ジャパンのチームに来てくれたことが、何よりもうれしかったよ。
――この大会から稲葉監督の提案で試合前の国歌吹奏で君が代をみんなで歌い始めた
稲葉氏 ハハハ。プレミアの直前で開催していたラグビーW杯を見て、みんな歌っていたのを見てね。サッカーの国際大会は、どこの代表でも歌っているでしょ? ああいうのが、かっこよく見えた。だからわれわれも「みんなで歌おう」って。でも後にも先にも歌ってるの、われわれの時だけだったね(苦笑い)。
――前大会は当時高卒2年目・周東(ソフトバンク)が好走塁で世界一に貢献。その後、主力となった。今大会も若い選手の成長が期待される
稲葉氏 本当に「あの経験が」というのは、本人にしか分からない。だからこそ「あの緊張感の中で」という成功体験を参加する選手は得てほしい。「あれができた」「これができた」という自信の積み重ねを得てほしいよね。
――練習の100回より、試合の1回という例えがある。プレミア12も究極体験ができる機会
稲葉氏 あとは個々の能力の集合体が一つのチームになること。それを若い選手が、感じる機会になってくれれば。ジャパンでは勝つことが、まず第一目標。その集団に自分がどういう役割で入っていけるか。それを分かっておくだけで所属チームに帰った時に、後輩とかにも話せることができると思う。
――勝ちにこだわった戦いをする必要があるのは、どのチームでも同じ
稲葉氏 そう。結局、所属球団に帰れば自分の成績が自分の年俸に反映する世界。所属チームで個の側面もあるのは分かる。でもジャパンは個じゃない。絶対的にチーム。勝った、負けたですべての評価が定まる。そこに自分がどうやって入っていけるか。それを考えられる選手になってほしいよね。
――前大会メンバーには後にMLBに移籍した選手も多い。個で評価された面々はチームを勝たせ、自分の価値も高めた。そこを目指すべきか
稲葉氏 まさにそう。国際大会では外国人選手のチーム、対戦相手を経験した時に、さらに新しい自分の立ち位置だって知ることができる。もちろん11月という季節は休みたい。だけど自分が出ることでひょっとしたら、野球をさらに盛り上げられるかもしれないし、興味を持ってくれる人も増やせるかもしれない。彼らだけでなくプレミアのときは、そういうところまで考えてプレーできる選手ばかりだった。
――若返ったメンバーから、侍ジャパンに不可欠な選手が新たに出てくることを期待したい
稲葉氏 もちろん。国際大会の経験という意味では少ないのかもしれないけど今後、本当に侍ジャパンを背負って立つような選手たちが集まっている。26年WBC、28年ロス五輪へ向け、戦いの中心になれる選手たちばかり。ワクワクするようなメンバーだし、楽しみでしかないですよ。