第37回東京国際映画祭の受賞者記念会見が行われ、映画「敵」で最優秀監督賞を受賞した吉田大八監督(61)と、同作で最優秀男優賞を受賞した俳優・長塚京三(79)らが登壇した。
大学教授を10年前に退いた77歳の老人を描いた同名小説をモチーフにした映画「敵」は、本映画祭で監督賞、男優賞に加えて、コンペティション部門の最高賞となる東京グランプリを受賞し、三冠を達成した。
吉田監督は「原作小説を30代のころに読んでいたんです。それを何年か前に読み返した時に、昔と全然違う感情がうまれて、それを何かの形で吐き出せないかなというところから映画が始まりました」と明かす。
ここ数年手掛けた作品と比べると「規模は小さかった」としつつ、プロデューサーらの後押しで好きなように表現ができたようで「自分の中では我慢や苦労は(少なかった)。もちろん、作っている時は苦労とかもあるけど、それも含めて楽しい映画づくりだったと言えると思います」と笑顔で制作を振り返った。
また吉田監督は、2014年に手掛けた映画「紙の月」で、第27回東京国際映画祭の最優秀女優賞(主演・宮沢りえ)と観客賞を受けている。「僕は俳優賞がすごくうれしくて」と口を開くと「なぜなら、僕は映画を俳優で見に行くものだと思っている。僕の映画は俳優を見に来てほしい。そこはずっと変わらないので、『俳優賞』をもらえるっていうのは、自分の思いが達成したっていう気持ちが強いです」と受賞への思いを語った。
主演の長塚は「こういう事態になるとは想像もつきませんでした」と穏やかな笑顔を浮かべると「妻のサポートがあった。食べるものがあって、寝るだけの時間を確保してもらって」と感謝し「映画祭に呼ばれて、果ては賞までもらえるとは考えてもみなかった」と最優秀男優賞の選出には驚きの声をあげた。