虎のネクストブレーク候補はこの男や――。藤川球児監督(44)率いる阪神は現在、秋季安芸キャンプの真っ最中。次世代を担う若虎たちが鍛錬に励む中、全国的にはこれまで全くの無名だった社会人1年目右腕が周囲からの高い評価を独り占めにしている。
藤川新政権の発足に伴い、3年ぶりにタテジマに袖を通すことになった金村投手コーチが「阪神は相変わらずいい投手が多いけど、その中でもアイツはいい。来年は一軍のブルペンで使えそう」と熱視線を送るのは、昨秋のドラフト会議で5位入団した石黒佑弥投手(23)だ。
最速150キロ超の直球とカット系の変化球を持ち味としてきたが、今秋から本格的に習得に取り組んでいるフォークボールがここにきて好感触。第2クール初日となった7日のブルペンでも指揮官の御前で100球超を投げ込み、状態の良さをアピールした。
チームのセットアッパー左腕・桐敷も「門別や茨木もいいと思いましたけど、僕は石黒が一番すごいと思いましたね」と後輩の急成長ぶりに目を丸くする。キャッチャーミットを手に石黒の球を受けた片山ブルペンコーチも「球速だけでなく球にスピンやノビもある。練習中のフォークも低めにしか集まってこないんだよね。そこは大きな武器。あのボールは使えるよ」と称賛の言葉を惜しまない。
藤川監督が目指すのは岡田前体制から続く「投手力を中心にした守りの野球」。質量豊富なブルペン陣は来季も虎最大のストロングポイント&生命線だ。今季の一軍登板はわずか3試合のみで終わった右腕だが、本格的な飛躍の季節がいよいよ目の前まで来ている。