〝凱旋試合〟に会場が歓喜の渦に包まれた。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦NHK杯初日(8日、東京・国立代々木競技場)、ペアのショートプログラム(SP)が行われ、りくりゅう〟こと三浦璃来、木原龍一組(ともに木下グループ)が71・90点で首位発進。約1年7か月ぶりとなる国内での実戦で、確かな存在感を示した。
木原の表情は引き締まっていた。「少しのことでは折れなくなったかな」。昨季は自身の腰椎分離症の影響で全日本選手権などを欠場。不完全燃焼のシーズンとなったが、今季は順調に練習を消化してきた。「ミスが出る時は必ずあるので、ミスをしても必ず戻る練習を常にやってきた」。この日はミスが出ても気持ちを切り替えて演技を継続。「ミスを引きずることなくまとめ切れたのは復帰して成長してきた点かなと思う」と一定の評価を下した。
練習の積み重ねが自信につながっている。「去年はケガで練習すらできない状態だったけど、今年は1試合1試合ミスがあっても、また次に見つかった課題を改善することができているので、本当にありがたい」。試合をこなす中で見つかる修正点をブラッシュアップし、次戦への成長につなげる――。アスリートとして自らの進化を目指すことができている現状に三浦も「昨季は2人で練習することができない期間を過ごしたので、今季は練習することができるありがたみを日々感じている」と神妙に語った。
今大会前には優勝したGPシリーズ第1戦スケートアメリカを上回る点数を目標に設定。SPでは5・89点届かず、三浦が「点数を目標にしているわけではないので…」と悔しさをあらわにしたところ、木原は「点数も目標にしてない?だって過去の自分たちに勝つと言っているから。フリーはフリーで超えればいい」とツッコミ。これには三浦も「ああ、そういうことね」と苦笑いを浮かべた。
取材の場でも仲睦まじさを発揮するのが〝りくりゅう〟の魅力。9日のフリーでもSPと同様に観客を総立ちにさせる。