野球の国際大会「第3回プレミア12」に臨む日本代表の侍ジャパンが、10日にチェコとの強化試合(バンテリン)に9―0で圧勝。13日に初戦(対オーストラリア)を迎える本番前最後の対外試合を終えた。試合後の井端弘和監督(49)が大きな収穫に挙げたのは「次の1点が大事になっているところで、送りバントができてよかった」というもの。あえて〝小技〟の重要性を説いた真意とは――。
井端監督が犠打を命じたのはいずれもリードを奪い、無死一塁の場面だった3回と8回の攻撃だった。桑原(DeNA)、村林(楽天)にサインを送り、走者を進めさせた。ここには国際大会の本番を想定した采配が詰め込まれている。
近年の侍ジャパンは2019年のプレミア優勝を皮切りに、21年の東京五輪では金メダル、23年WBCでも優勝。世界大会では無類の強さを発揮しているが、一発勝負となる大会では1点を争う展開が続くことは少なくない。
前回大会の優勝監督でもある稲葉篤紀氏(52)も「私がジャパンの監督を務めた大会でも、負けてもおかしくなかった紙一重の試合はいくつかあった」と振り返った一方で、過去の国際大会で窮地を救う〝技〟があったとも回想する。それが「犠打」だ。
前回のプレミアでは、予選初戦のオーストラリア戦で6回まで1―2とビハインド。まさかの黒星の危機もよぎり始めた中、7回に源田(西武)が二死三塁から鮮やかなセーフティーバントを決め、2―2の同点とした。
さらに、東京五輪では準々決勝の米国戦で延長タイブレークまでもつれ込み、無死一、二塁から同年の3冠王・村上(ヤクルト)に〝ピンチバンター〟として栗原(ソフトバンク)を起用。見事に1球で犠打を成功させ、その後にサヨナラ勝利を呼び込むお膳立てとなった。過去の戦いからも試合展開が煮詰まれば煮詰まるほど、こうした〝小技〟が窮地を打開してきたわけだ。
この日、井端監督が命じた犠打指令は、今回のナインへの意識づけにほかならない。前回のプレミアや東京五輪でも、侍首脳陣として一つ先の塁を陥れる重要性を知る金子ヘッドコーチは「誰が何番とかは当日の夕方でいい」とズバリだった。
本番でも侍ジャパンがここぞの場面で繰り出す〝自己犠牲〟こそが世界一奪取への勝負手となりそうだ。