阪神のオーナー付顧問に就任した岡田彰布前監督(66)が高知・安芸での秋季キャンプを訪れている。10日はブルペンに足を運び、藤川球児新監督(44)と約30分も野球談議に花を咲かせた。ひそかに〝岡田ロス〟に陥っているという本紙評論家の伊勢孝夫氏は、卓越した野球観と強烈なキャラクターで一時代を築いた前虎将を改めて称賛。「まだ老け込むような年齢ではない。近い将来もう一度ユニホームを着てほしい」とエールを送った。
【「新IDアナライザー」伊勢孝夫】三浦(DeNA)、高津(ヤクルト)、吉井(ロッテ)、岸田(オリックス)、西口(西武)、そして藤川。気が付けば12球団のうち半数の6球団が投手出身監督になったんやな。「投手出身監督は成功できない」なんて言われていた一昔前に比べると隔世の感があるわ。最近だと三浦や高津や工藤(ソフトバンク元監督)が日本一になってるもんな。
まずは藤川新監督の手腕に大いに期待するよ。理路整然としたテレビ中継での野球解説は興味深かったし、新たな風をチームに吹かせてくれそうや。野手面の作戦については専門のコーチの方針、判断を重んじる姿勢を強調しているし、柔軟なチーム運営をしてくれるんとちゃうかな。今の時代に即した指揮官像を見せてくれるやろ。佐藤輝や森下ら主力打者勢も、これまで以上に伸び伸びとやれると思うよ。
でもな…。ホンマのこと言うと、岡田前監督のような〝古いタイプ〟の名物指揮官が唐突な形でユニホームを脱いでしまったことが、俺には寂しくて寂しくて仕方ないんや。勝てば得意満面にその日の采配を語り尽くし、負ければ選手やコーチに対してボヤき倒す。周囲から疎んじられることをまるで恐れない姿勢はノムさん(野村克也)、落合、岡田あたりで最後かなあ。名物の「岡田語録」は日本の野球偏差値を大いに引き上げてくれたと思うよ。俺も毎回楽しみにしてたもん。第2次政権のこの2年間は野球が面白かったわ。
ニュースで見たけど岡田前監督は禁煙に成功したそうやないか。そら、ここからは健康になっていく一方やな(笑い)。まだ66歳。人生百年時代やし、老け込むような年齢と全然ちゃうやろ。ノムさんだって74歳まで監督をやった。体調が万全に戻ったら阪神でも阪神以外のチームでも構わないから、もう一度ユニホームを着てほしいよ。オーナー付顧問の任期は3年か。満了する頃にはムクムクと現場への欲がまた湧いてくるんとちゃうか? 勝手なことばかり言って悪いけど、同じ時代を生きた昭和の野球人として俺はそう祈っているよ。
(本紙評論家)